みのりの黒い思い出

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みのりの黒い思い出

中学生の頃、みのりには好きな人がいた。 長谷川優斗という太陽のような クラスのリーダー的存在の男子だった。 顔も整っていたし、 よく女子から告白されていたのを 覚えている。 中学生のみのりは引っ込み思案で 俗に言う陰キャだった。 だけど、そんなこと気にせず優斗は みのりによく話しかけてくれた。 優斗のそんなところに惹かれていた。 あるときテストでシャーペンを 床に落としてしまったことがある。 どうしよう。 手を挙げるなんて恥ずかしくてできない。 でもそれではテストができない。 困っていると優斗が床に消しゴムを落とした。 「すみません。消しゴム落としちゃいました!」 教師は呆れたような視線を優斗に向けたが 消しゴムを拾い、みのりの落としたシャーペンも 拾い上げた。 「これは誰のだ?」 「あ、私のです」 そう言うと教師はみのりの机にシャーペンを 置いてくれた。 ほっと安堵する。 ……もしかして、優斗くんはわざと 消しゴムを落として、私が注目されないように してくれたの? そう気づくとその恋心は一気に育ち花が咲いた。 目が合うだけで嬉しくて。 話しかけてくれただけで嬉しくて。 みのりは恋をしてから毎日が楽しかった。 時には校則違反の色付きリップを塗ってみたりして 彼に少しでも可愛く見られたかった。 しかし、舞い上がっていた罰なのか みのりはどん底に突き落とされることになる。
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