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見慣れない赤い髪。
振り向いた顔は確かに優斗だった。
しかし、その顔には生気がない。
驚きのあまり声が出なかった。
優斗はみのりの横を通り過ぎる。
いつもなら笑顔で
『おはよう』って言ってくれるのに。
どうしちゃったの。
「おっ 優斗その髪色似合ってんじゃん!」
髪を黄色に染めたクラスメイトが声を掛けて
親しげに肩に手を回した。
優斗はビクッと肩を震わせ怯えているかのように
視線を下に向けた。
みんな何ごとかとざわめいている。
「ゆ、優斗くん……」
勇気を出して声を掛ける。
「……」
「ねぇ、どうしちゃったの?」
「さい」
「え?」
「うるさいって言ってんだよ!!
オレに話しかけんなっ!!」
血走った目に涙を浮かべながら優斗は
腹の底から声を上げた。
その瞬間、足元がガラガラと崩れていくような
錯覚を覚えた。
どうして?
私、嫌われちゃったの?
鼻の奥がツーンとなって涙が溢れそうになった。
「……ごめん」
逃げるように教室を後にしてトイレで泣いていた。
失恋がこんなにも苦しいなんて
みのりは知らなかった。
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