みのりの黒い思い出

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それから、優斗は学校に来なくなった。 毎日みのりはプリントを届けに彼の家に行ったが 優斗が姿を現すことはなかった。 「みのり。今日もアイツの家に プリント届けに行くの?」 親友の佳奈が心配そうに言う。 「うん」 「やめときなよ! アイツ覚醒剤やってるって噂だよ。 危険人物に近づくなんて 何されるか分かったもんじゃないよ!」 「優斗くんはそんな人じゃないよ」 「みのり、いくらアイツのこと好きだからって 信じすぎじゃない? 大体長谷川は」 「やめてよ!!!」 思っていたよりもずっと大きな声が住宅街に響く。 「……何よ……。 わたしはあんたのこと心配して!!」 「あ……ごめん……今のは……」 「もういいよ。それなら好きにしなさいよ!!」 佳奈は帰り道とは反対方向に踵を返した。 それ以降気まずくて佳奈と話せない日々が続いた。 ちゃんと謝ろう。 そう思っているのに行動に移せず、 みのりは中学校を卒業した。 高校生になってから、 優斗が自殺したというニュースを見た。 父親から虐待を受けていた優斗は 友人に覚醒剤を勧められ、 薬に溺れていったのだという。 そんな。 嘘だ。 どうして気づいてあげられなかったのだろう。 自分自身を殴りたかった。 髪を染めてきたあの日、 理由を聞くこともしなかった。 涙が床にシミを作る。 大切な人を守れなかった悲しみは 今でもみのりの心に深く根付いていた。 皆がちゃんとしていれば 思い悩み自殺する生徒など現れない。 だからみのりは学級委員長に立候補したのだ。
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