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「え?? どういうこと??」
優斗から双子の弟が
いるなんて話は聞いたことがない。
「苗字が違うのはオヤジと母さんが別れて
兄貴は母さんの苗字の長谷川になったからだ」
衝撃の事実に頭がクラクラする。
「嘘……」
涙は椅子に座り、みのりをまっすぐに見つめた。
何となく気まずくて、
みのりは涙から目を逸らし頷いた。
でもすぐに涙に体を向ける。
「兄弟ならあの時何があったのか知ってるんでしょ?教えて。優斗くんに何があったの??」
涙はその言葉に俯く。
しばらくして涙は話し始めた。
優斗と涙は仲の良い兄弟だった。
喧嘩など1度もしたことがない。
兄の優斗はいつも明るく
周囲を笑顔にさせていた。
同時に優しさの塊でもあった。
1人でいるクラスメイトに声をかけ
ひとりぼっちを無くそうとするような人物だった。
しかし、その優しさが仇になったのだろう。
優斗は非行に走った友人を止めようとして
激怒した彼に半ば脅されるような形で
無理やり覚醒剤を飲まされた。
それから優斗の日常は変わってしまった。
毎日のようにその友人が付き纏い
何か余計なことを言わないようにと監視をする。
家では成績の悪い優斗を父親が殴る。
助けてと声を大にして言いたくても言えなかった。
そして覚醒剤をやめられなくなり
段々と自分を蔑ろにする
考えが頭に浮かぶようになる。
家族や友人が幸せであればそれでいい。
自分さえ我慢すればいいのだと。
でも、心と体が限界に近づいていく。
いつしか友人が脅してくるような幻覚が
見え始め、学校に行けなくなった。
もううんざりだ。苦しい。辛い。死にたい。
優斗はこの苦しみから逃れたくて
桜が舞う春に首を吊ってこの世界から旅立った。
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