第壱章 ~Destined encounter~ / プロローグ

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 あたしは、生まれつき心臓に病気があった。もう手術をして元気になったけれど、それまではずっとあの病院で、入退院を繰り返していた。  幼い頃から看護師になるのが夢で、今は都会の方にある源明(げんめい)看護大学で勉強している。 「もっと勉強して、いつか看護師になれたら……ゼッタイあそこで働くんだ」  お世話になった病院だから、今度は看護師として患者さんを()る側に立ちたい。  最初は、あたしが循環器外科でお世話になったということもあり、循環器外科の看護師として働きたいと思っていた。だけど、今は精神科の看護師を目指している。  あたしの恋人である彼が――精神を病んでしまったからだ。  3年前に起こったあの事件以来、自力では何も出来ないほどの無力感、あるいは錯乱状態に陥り、ボロボロになっていた彼。  今も染岡病院で治療を続けてはいるけれど、それでもこうして外を歩いたり、自然と笑顔を見せてくれるくらいには回復している。  ようやく手に入れた幸せを噛みしめたあたしは、涙色に染まるこの(みち)を振り返った。
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