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翔と共にお会計を済ませてお店を出た私たちは、「次はどうする?」と顔を見合わせて周囲をキョロキョロと見回した。
「ちょっとお腹いっぱいすぎて、他の店に入る気にはなれないな」
「そうだな。あ、それなら海の方に行かね?」
「海? うん、いいね」
季節は夏真っ盛りだったけれど、高校生の私たちには暑さはあまり関係なかった。
翔と共に近くの砂浜へと歩いていく。ちょうど雲で日が遮られていたこともあり、思ったよりも汗をかかずに済んだ。
たどり着いた砂浜には、私たちと同じような高校生らしい集団や、大学生のカップルらしい人たちがたくさんいた。サーフィンを楽しんでいる人もいる。海の家もあり、砂浜は大賑わいだった。
「ちょっと向こうの方に行こうか」
「うん」
翔は人が少ない方向を指差して歩き出す。頬を撫でる風が程よく心地よい。
「わっ」
砂に足を取られて転びそうになり、思わず声が漏れた。少し前を行く翔が「大丈夫?」と咄嗟に私を見た。
「う、うん。ごめん私、ドジで……」
「いや、歩き慣れないよな。良かったら、どう?」
そう言ってなんと、彼は自分の右手を私の方に差し出してきた。どういう意味なのか、考える必要もない。
「手……いいの?」
「ああ。いやその、朝香が良ければだけど……」
よく見れば翔の頬がほんのり赤く染まっている。照れくさいのか、私から視線を逸らしてちょっと前を見据えていた。私も恥ずかしくなったが、せっかくの厚意だし、甘えないわけにはいかない。
「じゃあ、お言葉に甘えて……」
自分の左手を彼の右手に重ねた。汗ばんだ彼の手は温かく、想像していたよりもずっと大きかった。
男の子の手って、こんなに大きいんだ。
初めての経験すぎて、心臓がバクバクと激しく揺れる。翔の手からも、緊張が伝わってきた。
「翔は、初めてなの?」
「初めてって、何が」
「女の子と手を繋ぐの」
「! あったりまえだろ。こんなこと、他のやつとしたことないって」
「そ、そうなんだ……」
意外だった。明るく誰とでも仲良くできる翔のことだから、きっと小中学生時代に仲良くしていた女の子と、こういうことだって平気でしていたと思ったのだ。
でも違った。手を繋ぐのは私が初めてなんだ。
その事実に、自然と頬が緩んでしまう自分がいた。
「とにかく行こうぜ。あっちの方だったら落ち着いて話せるだろ」
「うん、分かった」
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