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二日目 ハリボテ
「チョイさん、チョイさん」
「なぁに?」
「もう、随分走ってますけど、ずっと廃墟ですね」
「この辺りは汚染されてそれっきりだもの」
「ひ、汚染!?」
「大丈夫よ、もう凄く前の話だから」
「脅かさないで下さいよぉ」
「勝手に早とちりしただけじゃない。それより、その空き地で止めて」
「はーい、ほぼ空き地みたいなものですけどぉ」
「もう、めんどくさいわね。その建物の前よ」
「おー、了解しましたぁぁ」
『ガチャリ、ガチャリ、バン、バン』
「チョイさーん、で、なんです? ここ」
「ここはね、最終兵器がある建物」
「だとしたらでっかーい。車の二百倍くらいありますよ!」
「例える物が小さいから……イマイチぴんと来ないわね。いいわ、入りましょ」
「えへへ、はーい」
「中はまだ、しっかりしてるわね」
「ほんとだぁ。で、先っぽが尖った煙突みたいな、コレが最終兵器?」
「そうよ。コレの名はミサイルって言うの」
「ミサイル? ってヒューって飛んでドーンって言うあれ?」
「そう、ひゅーんて飛んでどーん! ってあれ」
「触っても大丈夫で――、ちょ!? チョイさん何を!?」
「何をって斧で叩くのよ」
「大丈夫なんですか!? てか斧なんていつの間に!?」
『ガス』
「あれ、チョイさん、これ・・・ハリボテ?」
「そうよ。昔ね、小さな国が大きな国を真似して超スーパーミサイルを完成させたの」
「ほうほう、超二重表現するほどの」
「それを聞いた大国は、小さな国に止めなさい! 危ない物は持っちゃダメ。こっちに渡しなさい! ってね」
「ふむ……」
「『これは我が国の最終兵器だから、絶対守るんだ!』と、このミサイルを厳重に守ったの」
「あれ? これって国を守るために作ったんじゃ?」
「ふふ、本末転倒よね。このミサイルを国で守るなんて」
「ですよねぇ、でも、なんで?」
「ハリボテだから」
「あー、ばれたら困りますもんね……。納得」
「そして大きな国は、小さな国にミサイルを撃ち込んだ。そして滅んだ小さな国。結局ね、大きな国も後で滅んだけど」
「ある意味最終兵器だったんだ。このハリボテ」
「結局はそうなったわね」
「なるほどねぇ。じゃチョイさん、このあたり漁って帰ります?」
「そうね、何か使えるものくらい見つかるでしょ」
「で、このハリボテは?」
「薪くらいはなるわ」
『ガス、ガス』
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