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 しぶしぶ朝食を共にし、どうにか祖母から逃げた樹は自身の母校である小学校にやってきていた。 「直門くん、困りますよ。卒業生とはいえね、事前に連絡をいただかないと。こんなご時世でもありますしね」  何の連絡もなくやってきた樹にひとこと苦言を呈したものの、校長は中に入れてくれた。「姪っ子の小学校選びに」と嘯いたのが功を奏したのかもしれないが、普通なら見学日でないと部外者は入れないのに入れてくれたのは、直門の名に対する特別扱いだというのが実際のところだろう。 「本当にありがとうございます。お邪魔にならないようにしますから。……早速ですが、図書室を見たいのですが、」 「校長先生!」  靴箱の近くで校長と話していると、廊下の向こうから体操服の生徒たちが走ってきた。中学年くらいの女子生徒が二三人、誰の顔にも不安げな表情が広がっている。 「廊下を走ってはいけないよ。どうしたんだい?」 「先生が気分悪くなっちゃったみたいで!」 「誰か呼ばなきゃと思ってあたしたち来たんです!」 「それで、校長先生がいらっしゃったから!」  口々に訴える生徒たち。話をまとめると、体育の授業中に先生が体調不良で動けなくなってしまった。これは大変だと誰かを、できれば保健の先生を呼びに行こうとした途中で校長先生に出会ったため、駆け寄ってきた、ということらしかった。 「事情はわかったよ。すぐに行こう」  安心させようと一人ひとりと目を合わせて頷くと、校長は通りすがりの女性教員を呼び止めた。 「きみ、保健の戌井(いぬい)先生に至急体育館に来るように伝えてくれないか。それと、こちらの直門くんを図書室へご案内してくれ」  言い残すと、校長は生徒たちとともに足早に体育館へ歩いて行った。ほとんど走っているような早歩きだ。 「ええと、まずは保健室に行きますね。すみませんが、少しお付き合いください」  女性教員は戸惑いつつも、優先順位を間違えないあたりさすがだった。 「ええ、もちろん。急ぎましょう」  保健室への道すがら、体育館で教員が体調不良だという事情を樹のほうから説明する。無事保健の戌井先生に言伝を繋ぎ、女性教員と樹は図書室へ向かった。
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