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「……ところで、歩さん? これは一体どういう状況?」
歩に押し倒されるまま、俺は布団に背をつけていた。歩は悪戯な笑みを浮かべて、俺の上へ馬乗りになる。
「心配すんな。おれがリードしてやる」
「わ~、頼もし~……」
「分かったら早くその粗末なモンを見せてみろ」
「粗末じゃねーし……っておい! なにすんの!」
「大人しくしろ」
「いやぁああぁ! チカン! ヘンタイ! セクハラ!」
「うるせェ。静かにしねぇか」
歩は俺のハーフパンツに手をかけると、サクランボ柄のトランクス諸共剥ぎ取った。まだ一度も女を味わったことのない純粋無垢な俺の分身が、ぽろりと零れ落ちた。恥ずかしいやら情けないやらで、俺は顔を覆った。
「くっ、もうお嫁に行けねェ……」
「男は嫁入りしねぇだろ」
「冷静な返しやめてくれる?」
「そもそも、てめェの嫁はおれじゃねぇのかよ」
「……ホント、そーいうとこ。お前それ、天然で言ってんの? それとも狙ってる?」
「てめェが言い出したことだろうが」
「あーはいはい、そーでしたね。俺の嫁さんなら、これくらいのご奉仕は当たり前だよなぁ?」
俺の分身をじっと見つめて、歩はごくりと喉を鳴らした。指先でそっと摘まんで、軽く扱く。みるみるうちに、そこはむくむくと大きくなった。
「インポじゃねぇってのは本当らしいな」
「当たり前だろ。いくつだと思ってんの」
「ふふ……お前のここ、こんな風になってたんだな」
そんなはずないのに、懐かしいような気持ちになってくる。ずっと昔からこうなることが決まっていたような、そんな感じがする。歩もきっと同じことを思っている。昔を懐かしむような目をしている。
しばらく、指だけで優しく扱かれた。下から上へ、上から下へと、歩の手が動く。自分でするのと大差ないのに、今夜はひどく敏感だった。
絞り出されるように、先端に汁が滲む。ぷっくりと透明な玉が浮かんで、それが弾けて零れ落ちる前に、歩の舌が舐め取った。
「ふ……少ししょっぱいな」
歩は軽く舌舐めずりをして笑った。真っ赤な舌が、唇が、俺の零した汁で濡れている。初めて目の当たりにする淫靡な光景に、頭がくらくらした。
俺は歩の頭に手を置いて、軽く押さえ込んだ。腰を突き出すようにして、行為の続きを促した。歩の唇が弧を描き、やがてゆっくりと開かれた。
「っ……あ、やばっ……」
思わず声が漏れた。口内に迎え入れられる感覚というのは、それだけ強烈だった。柔らかな舌が絡み付き、温かな粘膜に包まれて、唇で優しく扱かれる。初めて知る快楽に、腰がぶるりと震えてしまう。
「ぅあっ、ちょ、まって、タンマタンマ!」
急速にせり上がってくる射精感に、俺は情けない声を上げた。我慢するとかしないとかの問題ではなく、今にも精液が噴き出しそうだ。咄嗟に歩の髪を引っ掴んだ。
「マジやばいからっ、はなせって……!」
しかし、歩は楽しげに目を細めるばかりだ。離れるどころか、さらに深いところまで俺の分身を咥え込む。先端が喉の奥にまで届いている。極め付けに唾液を纏わせて吸い上げられれば、俺はもう白旗を揚げるしかない。
俺は歩の頭を押さえ込んだ。はち切れんばかりに膨らんだペニスが大きく脈動する。柔らかな口腔粘膜が、吐き出した精液を受け止めてくれる。歩は瞳を潤ませて、脈動するペニスに舌を絡ませた。断続的に噴き出す精液を、全て舐め取り吸い続けた。
ようやく射精が収まった。歩が窄めた口を引けば、粘液に塗れたペニスが姿を現す。粘度の高い精液が糸を引き、歩は音を立ててその残滓を吸い上げた。
歩の頬が丸く膨らんでいた。口の中いっぱいに、俺の精液を溜め込んでいる。
「悪りぃ、口に……」
ティッシュペーパーにでも吐き出してもらおうと手を伸ばしたその時だ。いきなり唇を塞がれた。今の今まで俺のモノをしゃぶっていた口だ。しなやかな舌と共に、生温かい液体が流れ込んだ。たった今、俺自身が出した精液である。
「おっえェ゛! てめっ、何すんだよっ!?」
俺はティッシュを二、三枚抜き取って、大急ぎで吐き出した。ぺっぺっと唾を飛ばしても、舌に纏わり付く青臭さが取れない。
「くそっ、何つーいやがらせを……」
「てめェの出したモンだぞ。とくと味わえ」
「自分のザーメンの味とか知りたかねぇよ! どんな特殊性癖だよ? お前がそーいうヘンタイだっつーことはよーく分かったけどな!」
「そう怒んなよ、准。おれからのキス、お気に召さなかったか?」
歩が艶やかに笑うものだから、勢いが削がれる。今は些細なことで怒っている場合ではないのだ。
「まさか、これで終わりじゃねぇだろうな」
「待てができねぇ駄犬は嫌れェだな」
「俺ほど辛抱強い奴もいねぇと思うけど? 何年待ったと思ってんだ」
歩は一枚ずつ服を脱いだ。ゆっくりとTシャツをたくし上げる。括れた腰、小さなヘソ、なだらかな肩が露わになる。次に、腰を浮かしてハーフパンツを下ろす。意外にむっちりとした太腿が露わになる。最後に、最も秘すべき場所を覆う黒のボクサーパンツを脱ぎ捨てる。焦らすように、足首から引き抜いた。
オレンジ色の電灯に照らされて、白い肢体が艶めいていた。この何もかもが俺のものだ。そう思うと、ぞくぞくしたものが全身を駆け抜けた。それは所謂優越感だったり、独占欲の充溢だったりといった感覚だった。
俺は歩にむしゃぶり付いた。本能のままに、その躰を抱きすくめて、押し倒して、唇を奪った。たった今まで口淫をしていたとか、精液の味がするとか、そんなことはもうどうでもよかった。強引に舌をねじ込んで、逃げる舌を絡め取って、歩の唇を味わった。
「おい、急にがっつくな……」
「無理」
「んッ……」
あられもなく曝け出された白い肌に手を這わせる。驚くほど滑らかで、瑞々しい。白磁のような見た目とは裏腹に、柔らかくて、しっとりしていて、自然と手に吸い付いてくる。まるで出来たての白玉団子だ。
「ひッ……な、なにしやがる」
「……甘ェ」
「バカ……」
硬く平坦な胸にちょこんと添えられた小さな乳首にしゃぶり付くと、歩は小さく悲鳴を上げた。少し舐めるとすぐに固く尖ってくるので、軽く歯を立てて噛んだ。歩は声もなく身を震わせた。
「ぁ、バカ、そっちは……!」
乳首を噛みながら、俺は歩の下肢へと手を滑らせた。毛の生えていない太腿から、小ぶりな尻を弄って、やはり毛の生えていない下腹部を撫でる。歩は口元に手を当てて声を押し殺した。
歩のそこも勃起していた。やけに白くて、仄かに桃色を帯びていた。手に優しく包んでやれば、俺の手の中で健気に震えた。透明な汁が俺の掌を濡らした。
歩も興奮しているのだ。俺に触れられて……いや、俺に触れたせいで? どっちでもいい。俺との行為に、歩が興奮している。その事実だけで、鼻の奥の粘膜が切れてしまいそうだった。
「もう無理。挿れていい? 挿れていいよね?」
汗で張り付くTシャツを脱ぎ捨て、俺は歩に覆い被さった。汗ばんだ肌と肌とが擦れ合う。自分は今どんな面をしているのだろう。獲物を前に涎を垂らす飢えた獣だろうか。
期待に潤んだ瞳が俺を見つめる。やがて、静かに睫毛が伏せられる。歩はおずおずと両脚を開いた。
「……来い」
歩が手を添えて導いてくれた。尻の穴を使うと知って、正直怯んだ。挿入する気は満々だったものの、具体的にどうするのかはよく分かっていなかったのだ。
「ホントにココ? このまま行っていいのかよ?」
「ビビッてんじゃねぇよ。いいから来い」
「び、ビビッてねぇし!」
ちゅぷ、と先端がキスをする。歩が見せてくれないのでよく分からないが、何かとても温かくて柔らかくて濡れている穴だ。穴というより、窪みに近いのかもしれない。軽く押し込んだだけで、呑み込まれるように先端が埋まった。
「うぁ……なにこれ、やばっ……」
「准……もっと奥まで来てくれよ」
「やっ、でもっ、これ以上は……」
「もっとてめェを感じてぇ」
「あぅぅ……」
歩の両脚が俺の腰に回り、抱き寄せられた。ぬぷぬぷぬぷ、とまるで泥濘にハマるみたいに、俺の分身は歩の体内に沈み込んだ。
情けない声を上げながらも、俺は気合だけで射精を踏みとどまった。気を抜けば今にも発射しそうだ。我慢できただけでも褒めてほしい。
だって、男の尻の穴がこんな風になっているなんて思いもしなかった。感触は口の中と似ているが、締まり方が断然違う。弾力のある襞が敏感な箇所に吸い付いて、じっくりと味わうようにうねっている。炎天下のアイスキャンディみたいに溶かされてしまいそうだ。
「んッ、ふふ……情けねぇ面」
上機嫌な歩に頬を抓られた。
「んだよ。お前こそ……」
歩は笑っていた。こんなにもいやらしいことをしているのに、汗だくになって互いの敏感な部分を擦り合っているというのに、歩は爽やかな優しい笑みを湛えていた。
胸がキュンと締め付けられた。初恋の匂いを思い出した。俺はこいつの笑った顔が好きだった。笑ってほしくて色々試したこともある。泣かせたり怒らせたり、そんな顔ばかり見てきたような気もする。だけどやっぱり、こいつの笑顔が一番好きだ。
「准……? どうした?」
「んー、いや……好きだなぁって」
吐息と共に感情が溢れた。こんなことをしているくせに、改めて気持ちを口にするのは照れくさい。適当な言葉で誤魔化そうとして、俺は口を開いた。その時である。
「あ、ぁ、あぁっ――」
「え、ちょ、なに!?」
「やっ、ぁ、だめだっ、だめ――」
聞いたことのない甘ったるい声で喘ぎながら、歩は俺にしがみついた。同時に、ナカが激しく収縮する。蕩けた襞が絡み付く。ぎゅううう、とまるで搾り取るような締め付けに耐えられず、俺は歩の最奥に精を放った。
「あぁ、あっ、なかに……」
「っ、ごめ……」
「なか、ぁ、あつ、い……」
歩はうわ言のように呟いて、全身を痙攣させた。ビクッ、ビクンッ、と何度も腰が跳ねている。
三擦り半どころか、ろくに動きもせずにイッてしまった。これはきっと男として恥ずべきことなのだろう。しかし……
俺はちらりと歩の様子を窺う。すべすべの下腹部が、白濁の液に濡れていた。ろくに触りもしないまま、俺のあの言葉だけで、歩はイッてしまったのだ。男のくせに、女みたいに抱かれてイッた。
こんなことが起こり得るのだろうか? だけど現にそうなっている。歩って実は女の子だったの? いやそんなことはない。確認するまでもなく、股間には男の象徴がぶら下がっている。
一瞬で色々なことが俺の脳裏を掠めたが、難しい話はどうでもよかった。理屈なんて抜きにして、今俺の腕の中にいるこいつが、余韻に震えて喘いでいる歩が、可愛くって仕方がなかった。
「ひッ……! あっ、まて、まだっ……」
「無理。お前エロすぎ」
「やッ、だめ、だめっ、なかだめぇっ!」
口では拒みながら、歩の両手は俺の首筋に回っていた。甘えるように縋り付きながら、いやいやと首を振って涙を散らす。その姿に目が眩んだ。舌の上に唾液が溢れて止まらない。腹の底が疼いて、早く喰わせろと唸っている。
「いやっ、あぁっ、だめっ、きもちっ」
「ん、俺も……ごめん、すぐイキそ……」
「ぅうう、いくッ、またいく、あぁあっ――!」
先に放った精液を掻き混ぜながら、俺は歩の最奥を穿った。突き上げるごとに、歩はしなやかな肢体を弾ませて善がった。何度精を放っても、終わりが見えなかった。許される限りいつまでも、歩の肚の中にいたかった。
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