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「……え?」
3日後に彼に会った瞬間に出た言葉だった。
家のドアのベルが鳴り、いつものようにドアを開けた。
背が高くて優しい美しい青年はもういない。
「カトレアちゃん…見て…俺、ちゃんとできたよ?」
私の目の前にいるのは髪と翼を真っ黒に染めた彼だった。
「これで、一緒にいられるよね?」
理解が追いつかなかった。
どう見てもノアは悪魔の姿になっている。
完全に堕天していた。
「ノア……な……何で?どうしてそうなったの?」
ノアに否定してほしかったんだと思う。
そんな事はしてないって、一番に言ってほしかった。
堕天する理由はただ一つ、命を奪う行為だ。
ノアは誰の命を奪ったの?
「分かんない、起きたらこうなってたんだ。」
彼は変わった。
彼は、私の知っているノアは嘘なんてつく男じゃなかった。
「私に嘘までつくようになったの?」
動揺した様子を隠してノアに聞くとノアはいつものように優しく笑った。
「僕、嘘なんてつかないよ?
本当に起きたらこうなってたんだ。
きっと運命だよ。運命で結ばれた2人は永遠に一緒にいないといけないんだよ?
だからこれからも恋人でいよう?
別れるなんてもう言わないで?ね?」
「で…でも、ノア」
ノアを諭そうとした瞬間、彼の大きな手が私の首を優しくキュッと締める。
誰かを殺めたであろうその手が怖くて何も考えられなくなってしまった。
「別れないから、絶対に。」
その目から慈しみは消えて憎悪すら透けて見える。
彼は悪魔の私よりも悪魔らしい。
あなたの彼を色に例えると何色?
まさか答えが変わるなんて思ってもみなかった。
私の彼は私と同じ黒に染まったの。
私ですら到達できない黒へ彼は変わった。
罪悪感は感じない。
むしろ快感とすら思ってる。
白を黒に変えるなんて、そんな罪深い事はない。
私はすぐに彼を受け入れた。
むしろ、もっともっと染まってよ。
私と同じ、真っ黒に。
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