変色

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あなたの彼を色に例えると何色? そう聞かれたら私は純白と答えるだろう。 私には秘密の恋人がいる。 彼は背が高くて美しい白銀の髪をした天使。 大きな白い翼がいつも本当に格好いい。 彼の名はノア、天界を統べる一族の1人。 私は彼が好き、優しくて穏やかで温かい彼を心の底から愛してる。 初めはただの遊びだった。 天使を揶揄って遊んだらどんな顔をするだろう。 私の好奇心をくすぐったのが彼だったから、彼にした。 まさか、その一言しか出てこない。 まさか、私が彼に恋をするなんて。 ただの愛し合う恋人達、それなら話は簡単だった。 私と彼は決して結ばれることはない。 彼は気高い天使だけど、私は身も心も冷酷な悪魔。 天使と悪魔の恋はこの世界においてはタブー。 私は彼を愛している、だからこそ今日彼を手離す決意をした。 私は悪魔だから、冷酷で残忍な女だから、私の部屋で、今目の前でココアを飲んでいる彼に唐突に告げる。 「ねぇ、ノア。 今度からこの部屋には来ないで? 私たち別れましょう?」 私の言葉を聞いたノアは心底傷ついたような顔をする。 「それに正直に言うとね? 天使のお坊ちゃんは退屈でたまらないのよ。 やっぱり私の恋人は身も心も真っ黒な悪魔でないと。」 私の最大の愛の証だった。 あなたには、あなただけは幸せになってほしい。 本当は私がこの手で幸せにしてあげたかったんだけど、それはきっと無理だから。 純粋なノアを傷付けるのは本当に心が痛むけど、これでどうか分かってほしい。 悪魔なんかを相手にしたら酷い目に遭うって。 「カトレアちゃんは…やっぱり、悪魔が好きなの? 天使の僕は愛せない?」 ノアが呼んでくれるこの名前が好き。 胸の奥がキュンと疼くから。 「そうね。そもそも、リスクが大きすぎるのよ。 ノアは格好良くて素敵だけど、私がノアに手を出しているとお堅い天界の連中に知れたら私が殺されるでしょう?だから今日でお終いよ。」 私がそう言うとノアがゆっくり立ち上がった。 「リスク………か。そう……分かった。」 胸が張り裂けそうだった。 あなたを傷つけた事も、もう二度と会えない事も。 あっさりと別れを了承された事も。 ノアは悲しそうな表情を一変させ私に優しく笑いかけた。 「カトレアちゃん、いきなり離れるなんて俺はできないから3日後にまた来てもいい? ちゃんと心の準備をして来るから…お願い。 最後の俺のお願いを聞いて?」 最後の願い、か。 私は本当に弱い、別れを切り出したくせに最後に一度だけ会えると思うとその日が欲しくて堪らなくなった。 弱い私は一度だけ頷く。 本当に次が最後、でもよかった。 今日が最後じゃないんだから。 この時は考えもしなかった。 彼がまさか、あんな事をするなんて。
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