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ようやくホームにやって来た次の電車に、俺は1番に乗り込んだ。この路線の車両は乗客がたくさん乗れるよう車両の両サイドにシート席があるだけのものだ。シート席の端の、出入り口に一番近い席に座った俺は、尾行者がいないか油断なく車両を観察した。
幸いにも、その後怪しい人物も見当たらず、電車は出発した。
もちろん、油断することはできない。電車が出発してからも、俺は不自然な動作をする者がいないか、絶えず周囲に注意を払った。
そうして電車が数駅ほど通り過ぎた時、俺は何者かの視線を感じた。
チラリと視線を返すと、向かいのシート席に座る女が俺を見ていたのだ。ちょうど、俺の真向かいに座っている。
女は俺と視線が合うと、一瞬だけ間を開けて、スッと下に視線を逸らした。
また尾行者か。
俺は内心で舌打ちをしながら、その女を気付かれないようにそっと観察した。
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