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「……遅くなり、大変申し訳ありません……」
わたしは深々と頭を下げて、謝罪の言葉を口にすると……側にいた次長も一緒になって頭を下げてくれた。
……次長……。
まさか、一緒に謝罪してくれるとは思ってなくて……驚きの気持ちよりも申し訳なさと部下思いの優しさにわたしの心がじーんと、感動した矢先……
「早く、お配りしてっ!!」
次長が先方に聞こえないように……声を潜ませてボソッと言った……。
刹那……。
すーっと、わたしの心の中に抱いた次長に対する申し訳なさと部下思いの優しさは綺麗さっぱり消え去ってしまった……。
「は、はいっ……!」
次長の声にわたしは慌てて頭を上げた……。
バチッ。
先方の男性ー青年と目が合った。
さっきは太陽の光で分からなかったけど……わたしが顔をあげた時、タイミングよく日が陰って、青年の表情を見ることができたんだ。
ドキッ!
鼓動が大きく高鳴った。
かっ、かっこいい……。
キリッとした細く真っ直ぐひかれた眉。
切れ長い瞳。
すっと鼻筋が通り、結ばれた唇。
精悍な顔立ちの青年が目を細めて、微笑んだ。
うわっ……
優しい微笑み……。
ドキドキッ!!
一段と早く、大きく鼓動が高鳴り打ちつけた。
「きっ、君、企画書をっ!」
次長の声で、再びわたしはハッと我に返る。
あまりにも格好良くて……つい見とれちゃってた……。
「はっ、はいっ! すいませんっ……!」
わたしは企画書を渡すべく、足早に青年の方へと歩き出した瞬間……。
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