『9』

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『9』

 改めてフードを頭にきつく被ると、大騒ぎになっている横断歩道に背を向け、私は歩き出した。  あのまま死ねばいい。あんな男、死んで当然だ。妻帯者の分際で、私の大好きなを誑かした、ゴミのような男。  姉はあの男に捨てられ、それでも待ち続け、そしてある日自殺したのだ。  しかし姉も何故あんな男を愛したのか。調子がいいだけのクズ男を。  姉はいつも言っていた。「あの人は奥さんに冷たくされて可哀想なの。私が天使になってあげなきゃ」と。そんなの、都合よく甘えられていただけなのに。  姉の死後、私は復讐の準備のために姉のフリをして一度あの男を呼び出しているが、あのゴミ男は私が姉ではないと少しも気づかず「愛してる」「待っててくれ」なんてほざいた。顔は似ていても、体型や声はまるで違うのに。  ──まあいい。何はともあれ復讐は終わったのだ。  少し晴れやかな気持ちで車が行き交う道路に目をやれば、99-99というナンバーの車が横を通り過ぎて行った。  私のエンジェルナンバーは『9』。課せられた使命があることのお告げ。  それは今果たされた。 END
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