『1』

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 やがて乗り込んだ電車の中、ふと「糖質オフなのに最高に美味い! 1番星ビール」というつり革広告が目に飛び込んで来た。  そういえばしばらく缶ビールを飲んでいない。俺はもともと家で酒を飲む習慣がなく、缶ビールを飲むとしたら彼女の家くらいだった。  1人の自由を満喫する身ではあるが、あれから彼女とは一度も会っていない。そりゃ会いたいが、会ってどうするのだろう。また同じことを繰り返すのか。  なんなら彼女の方はとっくに新しい恋を始めているかもしれないのだ。音沙汰もないし、敢えて絡まないのが優しさというものだろう。  駅前のコンビニで春の新作パスタと飲み物、デザートを購入したら、会計がぴったり1111円だった。なんだか少し気分が上がる。  俺1人しかいない広々としたリビングで、簡素な食事を済ませた。今日は早く帰ってきたと思ったのに、アクション映画を1本観終えたらもう夜の11時だ。  明日も仕事。そろそろ寝よう。 ***  午前1時。なんだかんだ寝付けずスマホで漫画を読んでいたら、静寂の中にピロリンと電子音が小さく響いた。手の中のスマホはマナーモードにしてあるから、社用携帯の音だ。  こんな時間に何か緊急の連絡だろうか。ベッドをのそのそ這い出て通勤用のバッグを漁る。  画面を光らせたら、ショートメールが1件届いていた。未登録携帯で、開いてみると彼女だった。しかし、こんなにやたら1が多い番号だったか。まあ記憶違いかもしれない。 『会いたい』  たった一言のメール。でも、俺を動かすのには充分過ぎる。  慌ててベッドを飛び出て着替えると、俺はすぐにタクシーを呼んだ。
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