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「エンジェルナンバーは、天使のお告げみたいなものだよ」
妹から聞いたんだけどね、と補足してから彼女は続けた。彼女には歳の近い妹がいて、とても仲がいいらしい。
「確か数字ごとに意味があるの。えっと、『3』はなんだったっけな……」
彼女はジョッキを置くと、バッグからスマホを取り出して調べ始めた。俺はその隙にジョッキを空け、タブレットで追加注文する。明日を気にせず飲める酒は格別に美味い。
「はい、読みまーす。エンジェルナンバー『3』は、あなたが守られていると伝えています。だから何があっても大丈夫、上手くいくので自信を持って生きましょう。だって」
「へえ。要はおみくじの大吉みたいなもん?」
「そんな感じかな。そういえば先月今月って営業成績一位でしょ? ノリノリってことなんじゃない?」
「えー、それは俺の努力……」
わざとらしく口を尖らせれば、彼女は「ちゃんとわかってますよー。ほんと頑張ってるね、毎日お疲れ様」とやわらかく微笑んでくれた。社畜の俺は、彼女のこういうところに日々癒されているのだ。
数字の『3』が本当に絶好調のお告げなのかはわからないが、彼女とは変わらず順風満帆。だから仕事も頑張れる。それで充分だ。
「あ、『3』と言えばさ。今度の3連休、プチ旅行でもするか? 温泉とか」
「えっ、ほんとに? 行けたら嬉しいけど……無理しなくてもいいんだよ?」
「大丈夫。その3連休、嫁は息子連れて実家に顔出してくるって言ってたから」
俺には妻と3歳になる息子がいる。でもちゃんと彼女も大切にする男だ。
「そうなんだ、やったー! じゃあどこ行こっか?」
楽しげにはしゃぐ彼女が可愛くて、また酒が進んだ。
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