『2』

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『2』

 ハッと目を開けると、ぼんやりとした豆電球のオレンジに迎えられてほっと息をついた。  内容は一瞬にして忘れたが、ひどく嫌な夢を見ていた気がする。ぐっしょりかいた寝汗に気づき、着替えようとベッドから抜け出る時に何気なく時計に視線をやれば、デジタル表示は2:22。  数字の『3』ずくめだった俺の日常は、一変して『2』だらけになった。きっとあの夜──妻が彼女の家に乗り込んで来た夜から。  あの日、妻は会社を出た俺を尾行していたらしい。妻は彼女の家に上がり込み、暴言の限りを俺と彼女にぶつけた。あまりに喚くから隣の部屋の住人が心配して駆けつけたほどだ。  一体いつからバレていたのだろう。  家では妻の母親まで待ち構えていた。お義母さんは今日息子の面倒を見ていてくれたらしいが、当然事情は知っていた。気まずい。  とりあえず朝方まで謝り倒し、その場で彼女の連絡先を完全消去した上で、彼女とはもう会わないと約束して何とか収拾をつけた。  あれから2週間。俺は毎日直帰しているが、妻とは息子の前で以外ほとんど口を利かない毎日が続いている。言葉の代わりに妻は俺に蔑んだような視線を向けてくる。ヒステリーも勘弁だけれど、これはこれで息が詰まりそうだ。  気が滅入っているせいかたまたまなのか、仕事も上手くいかない。あんなに簡単に新規契約が取れていたのに、今は鳴かず飛ばず。営業成績は順位が2つも落ちた。
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