July〜眠れない夜には〜

3/7
前へ
/7ページ
次へ
自分の方が大変だというのに、夏樹は不器用ながらも寄り添ってくれる。雛の頰が自然と緩んだ。 『ありがとう』 そう送った後、追加でインコがお辞儀をしているスタンプも送る。雛は胸が温かくなるのを感じながら、ベッドの中に潜り込んだ。 両親はしばらく長野に滞在することになり、雛は実と協力しながら生活していた。留守番が始まって一週間が経過した頃である。 「雛〜、カレーできたぞ!」 「は〜い!」 今日が食事当番の実が夕食のカレーを作り終わり、雛はリビングに向かう。テーブルの上にはカレーとサラダが並んでいた。 「おいしそう!お兄ちゃん、ありがとう!」 「もっと褒めたまえ。俺はカレーとカップラーメンだけはうまく作れるからな!」 雛のお腹が音を立てる。カレーは雛の好きな食べ物だ。一気に食欲が湧いてくる。その時だった。実が「これ見ながら食おうぜ〜」とゲオで借りてきたのであろうDVDを取り出す。 「えっ……」 雛の顔が引き攣った。DVDのパッケージには黒い髪の女性が描かれている。その不気味なパッケージには「鯖子」と書かれていた。ホラー映画である。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加