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自分の方が大変だというのに、夏樹は不器用ながらも寄り添ってくれる。雛の頰が自然と緩んだ。
『ありがとう』
そう送った後、追加でインコがお辞儀をしているスタンプも送る。雛は胸が温かくなるのを感じながら、ベッドの中に潜り込んだ。
両親はしばらく長野に滞在することになり、雛は実と協力しながら生活していた。留守番が始まって一週間が経過した頃である。
「雛〜、カレーできたぞ!」
「は〜い!」
今日が食事当番の実が夕食のカレーを作り終わり、雛はリビングに向かう。テーブルの上にはカレーとサラダが並んでいた。
「おいしそう!お兄ちゃん、ありがとう!」
「もっと褒めたまえ。俺はカレーとカップラーメンだけはうまく作れるからな!」
雛のお腹が音を立てる。カレーは雛の好きな食べ物だ。一気に食欲が湧いてくる。その時だった。実が「これ見ながら食おうぜ〜」とゲオで借りてきたのであろうDVDを取り出す。
「えっ……」
雛の顔が引き攣った。DVDのパッケージには黒い髪の女性が描かれている。その不気味なパッケージには「鯖子」と書かれていた。ホラー映画である。
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