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「これ明日返却しないといけないんだよな〜。観ていいだろ?」
そう言いながら実は鯖子をDVDプレーヤーにセットし、テレビをつけてしまった。途端に暗く不気味な音楽が流れ出し、雛は心臓がバクバクと脈打つのを感じた。手が微かに震えていく。
雛は幼い頃から幽霊や呪いといったものが苦手だ。怖くて夏に放送される心霊番組など観ることはおろか、ホラー小説を読むこともできない。しかし実は雛とは真逆でホラーが大好きである。
(怖いのは嫌だけど、怖いなんて言ったら絶対馬鹿にされるよね……)
なるべくテレビ画面を見ないように雛はカレーを黙々と食べることにした。しかし、悲鳴や音で雛の肩がびくりと震える。地獄のような時間が過ぎていった。
「いや〜、いい映画だった。俺の中で一番のホラー映画は鯖子だな!」
映画がようやく終わった後、実は満足そうに笑顔で頷いていた。その近くで雛は真っ青な顔をして「ソウダネ……」と死んだ声で呟く。すると、みのるが椅子から立ち上がり、リュックサックを手に取った。
「お兄ちゃん、どこか行くの?」
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