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嫌な予感が募る。実は笑顔で「彼女の家!鯖子語り合おうと思って!」と言うと雛が止める間もなく出て行ってしまう。実の彼女もホラー好きなのだ。
「行っちゃった……」
リビングが一気に静まり返る。普段は気にならないこの静寂も、ホラー映画が流れていた後だと恐怖が生まれていく。
ギシッ……ガタガタ……。
何気ない音にもびくりと肩が震えてしまう。映画のワンシーンが次々と蘇り、雛は泣きそうになった。その時、頭に夏樹の顔が浮かんだ。
「で?ホラー映画のせいで一人でいられなくなったから、俺を呼んだと」
「……うん。お兄ちゃん、どうせ朝まで帰って来ないだろうし。お願い。朝までいて!小さい頃はお泊まり会なんてお互いの家でよくやってたじゃん」
呆れた様子の夏樹に、雛は手を合わせて頼み込む。夏樹は横に顔を逸らし、「朝までいてなんて、軽々しく言うなよ」と小さく呟いていた。
「一生のお願い!今度、ハーゲンダッツでもジュースでも何でも奢るから!」
ここで夏樹に帰られてしまっては、雛は震えて一夜を過ごすことになるだろう。雛が泣きそうになりながら懇願すると、夏樹は深いため息を吐いた。
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