『種じゃ』

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『種じゃ』

 夢か……  僕はやけに生々しく感じた『全能の神様』 との会話を思い出しながら天井を見上げた。  その日は、やけに気分が良くて…… よく笑った一日だった。  そして夜になり、読みかけの本を 枕の横に置くと僕は灯りを消し眠りに ついた……と、はい、秒で登場! モフモフの雲に乗った『全能の神様』  「わしじゃ……」  僕は驚き目を丸くした。  「な、なんなんですか……人がせっかく 良い眠りにつこうとしてるのに……  あなた神様でしょ? 人に苦痛を与える気かよ」  僕が口を尖らすと全能の神様は、  「これこれ、そんなにぷんぷんするな…… 寿命が縮まるぞ」と呟いた。  「はぁ、余計なお世話ですぅ」  僕が言うと全能の神様は、  「昨夜の話の続きじゃ……」と言うと  また、長いあごひげを触りながら、 モフモフの雲の中から何かを取り出すと、  僕に投げ渡した。  「ほれ……受け取れ」  僕の両手に投げ入れられたのは、 ちょうど『たまご』くらいの大きさの茶色い個体。  僕はそれを見ながら、全能の神様に尋ねた。  「何これ? なんかのたまご?」  すると全能の神様は一言、  「『種』じゃ……」と呟いた。  「種? 何の? たまごじゃないの?」  「たまごぉ~じゃない。種じゃ」  全能の神様はモフモフした雲の上を コツンと長い杖で叩くと、  「おまえさん、この種を育ててくれ」  と言った。  「育てるって? これ一体何の種なのさ。 育て方……説明書とかないの?」  焦る僕に全能の神様は、  「育て方は自己流じゃ。  また様子を見に来るでな。  枯らすでないぞ……」  そう言うと、全能の神様は僕の前から消えた。  いつの間にか朝になりパチッと目覚めた僕は、 天井を見つめると、片手になにかの感触を覚え 手を挙げるとそこには夢で全能の神様から 手渡されたたまごくらいの茶色い種を 握りしめていた。  
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