とりあえず

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とりあえず

 その日、目覚めた僕は一日中、 その種を眺めていた。  いったい、何の種なんだよ……  大体、夢の中の出来事だったのに、 僕どうかしちゃったのか?  にわかに信じられない現象に 頭を抱えていた僕であったが……    暇だし、やってみるか…… と思い立ち、差し入れで貰った お菓子が入っていた缶に、 土を分けてもらうと全能の神様から 貰った『種』を埋め、取り合えず 水をかけてみた。  一日目、変化なし。  二日目、変化なし。  三日目、変化なし。   四日目、水をやり過ぎて缶から土が溢れ大騒ぎ。  そして、七日が過ぎたが種に変化は見られ なかった。  その夜、僕はいつもより早く眠りに ついた……。  僕は、いつも『道を歩く』夢を見る。 行き先はわからないけど、何処かに行こうと している夢だ。  いつものように夢の中で歩いていると、  「はい、どぉ~ん。お久ぶりじゃ」  モフモフ雲にのった例の神様が 久々に登場したのだった。  「元気そうじゃな……どうじゃ、種の様子は」  全能の神様が微笑んだ。   「神様、この種本当に芽がでるの? 水をやったり、日光に当てたり、あっ、肥料も やってるけど、変化が何もないよ」   僕が言うと、またまた長いあごひげを 触りながら、  「ふん、ふん、そうか、そうか…… 芽が出ぬか……まぁ、根気よく頑張れよっ!  じゃあ……」  と異様に明るいテンションで消え去った。  何か助言がほしかった僕が…… 小さな溜息をつくと、  ピピピピ……ピピピピと音が聞こえ 僕は朝を迎えた。
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