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僕の目の前には、全能の神様から渡された
『種』を眺める僕の姿が映し出された。
すると、全能の神様が言った。
「よいか……よく見ておれ。
わしから種を渡されたおまえさんは、
まず……種を植えようとベットの隣の
床頭台をゴソゴソと始めた。
次に、美人で綺麗な年上の看護師の
お姉ちゃんに、頬をポッと赤らめながら、
『中庭の土を少し貰いたいんですがぁ~』
と直訴した」
「ちょっとぉ、説明が雑すぎるんですけど」
「そうかのぅ? で、次におまえさんは、
毎日毎日種に水をやり、肥料を与え、
缶を片手に中庭に出るようになった。
少しづつであるが、同室の入院患者とも
缶を片手に話をするようになった……。
リハビリも積極的に参加しておるではないか。
ほれ、見てみぃ、物陰からおまえさんを
見つめて涙を流しているお色気たっぷりの
おまえさんの母さんとちょっと残念な
イケメン俳優風の父さんを……」
「だから、所々に笑いをとるような説明は
やめてよ」
「すまん、すまん。で最後はおまえさんの
ことを心配している友達じゃ……
おまえが元気で戻ってくるのを待ってるぞ」
全能の神様が微笑んだ。
「うるせぇな……」
僕は目頭が熱くなるのをこの神様だけには
絶対に見られたくないと思い必死でこらえた。
「もう、わかったじゃろ?
おまえさんに渡した『種』は
『やる気』の『種』じゃ……」
と全能の神様が呟いた。
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