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いつからだろう、私ではない別の誰かの感覚を感じることがある。
例えば、部屋の掃除をしている時に突然弾むような気持ちになったり、カフェでコーヒーを飲んでいる時に前触れもなく怒りが込み上げたり、トイレに入っているのに胸が高鳴ったり。
最初は自分がおかしくなったんじゃないかと疑った。
だけど繰り返すうち、感じる感情があまりに脈略がないので、どこかの誰かのものなんだと確信することになった。
それは誰かはわからない。
時間が経つにつれ、その感情を強く感じるようになった。弾む気持ちの中の僅かな罪悪感だとか、怒りの感情の中の相手への理解だとか、恋心の中の打算的な気持ちとか。
私の気持ちもどうやらその誰かにも伝わっているらしく、戸惑いの感覚も感じるようになった。
そうしているうちに、幸せな気持ちの中の私への優越感だとか、悲しい気持ちの中の私への縋る思いだとか、悔しさの中の私への嫉妬心だとか、そういう気持ちも感じるようになった。
ならば、私の中の貴方への優越感も依存心も嫉妬心も、貴方は感じているのね。
そう、貴方の優越感への私の嫉妬心への貴方の優越感とか、貴方の悲しみへの私の優越感への貴方の怒りだとか、あなたとわたしの依存心の安心感だとか。
お互いの感情が反響しあい、今やこの感情が貴方のものなのか私のものなのかがわからなくなっている。
今の、この、パフェが美味しくて嬉しい感情は、誰のもの?手を切って痛くてその痛みを貴方にも感じさせて嬉しいのは誰のもの?あの人に告白されて嬉しいのを感じさせて嫉妬させてるのは、誰?
私は私の人生を生きてけているの?
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