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「そんなちゃちな事はしないさ。目的はアンタってだけで、他の人間はついでだね」
「なに?」
ゼノは険を深める。
「お前達は、ついでで私達を殺したって言うのか!!」
傷ついたゼノをかばうようにアルトナは前に出て叫んだ。
「威勢だけいい蟲だね。利用価値がないやつらは、我らの餌になればいい」
冷徹な声が響いた瞬間、何かが月光にきらめいた。
「ばか!」
ゼノは叫び、次の瞬間アルトナの絶叫が辺りを包んだ。
「おやおや、さすがアウロス様が見込む【荒熊】だね。いい反射神経をしている」
「ぐぅ、アルトナ!」
ゼノが振り返った先、アルトナが顔面を押さえてうずくまっていた。
「うぅぅぅ、あぁぁ!」
アルトナは痛みを我慢し、それを左の眼球から引き抜いた。
「よ、よくもぉ!」
敵が放った手投剣はゼノの腕を貫通し、アルトナの左眼球を直撃して止まっていた。ゼノが間に入らなければ、アルトナは即死していただろう。
「用があるのは俺なんだろ?」
「ええそう」
「なら、一対一でどうだ」
「ええ、よくてよ」
余裕たっぷりと言ったようにソレは月明かりに姿をさらした。
紫の軽鎧に身を包んだ女だった。
「名前を聞いておこうか」
「ネフィル」
にたりと女は不気味に嗤い、剣を抜く。
「アルトナ、ダレンの街で合流だ。いいな」
「い、嫌だ!」
「隊長命令だ。いけ」
「嫌だ!」
激痛に耐え、彼女は叫ぶ。
「いいから聞け、俺達の事を誰が後世に伝えてくれるんだ。行け、行ってくれ。俺達のためにいってくれ!」
そこから、アルトナの記憶はなかった。
気がつけば、名も知らない村のベッドで寝かされたいた。
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