一章 手向けとなるのは

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「そんなちゃちな事はしないさ。目的はアンタってだけで、他の人間はついでだね」 「なに?」  ゼノは険を深める。 「お前達は、ついでで私達を殺したって言うのか!!」  傷ついたゼノをかばうようにアルトナは前に出て叫んだ。 「威勢だけいい蟲だね。利用価値がないやつらは、我らの餌になればいい」  冷徹な声が響いた瞬間、何かが月光にきらめいた。 「ばか!」  ゼノは叫び、次の瞬間アルトナの絶叫が辺りを包んだ。 「おやおや、さすがアウロス様が見込む【荒熊】だね。いい反射神経をしている」 「ぐぅ、アルトナ!」  ゼノが振り返った先、アルトナが顔面を押さえてうずくまっていた。 「うぅぅぅ、あぁぁ!」  アルトナは痛みを我慢し、それを左の眼球から引き抜いた。 「よ、よくもぉ!」  敵が放った手投剣はゼノの腕を貫通し、アルトナの左眼球を直撃して止まっていた。ゼノが間に入らなければ、アルトナは即死していただろう。 「用があるのは俺なんだろ?」 「ええそう」 「なら、一対一でどうだ」 「ええ、よくてよ」  余裕たっぷりと言ったようにソレは月明かりに姿をさらした。  紫の軽鎧に身を包んだ女だった。 「名前を聞いておこうか」 「ネフィル」  にたりと女は不気味に嗤い、剣を抜く。 「アルトナ、ダレンの街で合流だ。いいな」 「い、嫌だ!」 「隊長命令だ。いけ」 「嫌だ!」  激痛に耐え、彼女は叫ぶ。 「いいから聞け、俺達の事を誰が後世に伝えてくれるんだ。行け、行ってくれ。俺達のためにいってくれ!」  そこから、アルトナの記憶はなかった。  気がつけば、名も知らない村のベッドで寝かされたいた。          ・
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