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プロローグ-1 時を越えた男
目が覚めたら、そこはよく分からない装置の中だった。
──目が覚めた?
記憶の糸を手繰ってみても、直前の記憶は「致命傷を負い、限界を迎えて意識を手放す」というところで止まっている。言い換えれば、本当なら私はとっくに死んでいるはず。目が覚めた、その現象自体が異常である。
装置の中にいるということから考えるに、これは噂に聞いていたコールドスリープというやつだろうか。技術は確かに開発されていたが、実用できたのか。
私は、無理矢理にでも延命させられ、治療をされたらしい。一体何のため、どれくらいの間されていたのか──疑問を解決するため、周囲のものを確認しなければ。
装置のドアが開いたので、体を起こす。運動能力は少し落ちている。混乱する意識の中、視覚情報をうまく処理できないが、ちゃんと目の前に人間がいるということは理解できた。
「意識覚醒を確認、バイタルに異状なし……成功ですね。良かった。今この瞬間、歴史の教科書に書く内容が増えましたね」
私の目覚めを冷静に分析したのは、黒髪の女性。歳の頃は三十辺りだろうか。敵意は一切無いだろうことが分かる。
「あなた達が……私を治療したのですか?」
「……驚きました。混乱するかと思いましたが。流石は英雄、強靭な精神力です」
混乱はしている。その上で、それを意図的に抑える方法は熟知している。メンタリティーとは、技術だ。
「英雄、ですか」
「はい。この時代で、貴方はそう呼ばれている。とはいえ、いくら貴方であっても、色々と一気に情報を飲み込めはしないでしょう。なるべくゆっくりと、お伝えします」
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