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少し気味が悪い。時代は私を英雄にし、人となりを想像できるようにしたらしい。名は残らなかったはずだが。
それも表には出さず、私は彼女の話を聞くことにした。
「まず、私が何者なのか、からですね。私は、夕凪 菖蒲。日本国防軍に所属しています。貴方の身柄を保護する任務に当たっていましたが、その最中に、貴方を目覚めさせること、その後に案内を担当することが決定し、今に至ります」
「それはまた……お疲れ様です」
「いえ。これくらいは、慣れています」
日本か。母国が私を引き取ってくれるのなら助かる。国防軍という名は記憶に無いので、何かしらの体制の変化はあるだろうが、知らない場所ではないのならありがたい。
「それで、私は一体どれだけ眠っていたのですか?」
「およそ……七百年といったところでしょうか」
「なっ……!?」
流石に平静を装えなかった。よくそれほどの期間、装置がもったものだ。よくそれほどの時代を経て、私の存在が、それを守る使命が、受け継がれたものだ。
人の良心というのも、捨てたものではない。
「ですから、世界地図も貴方が知るものとは全く異なるでしょう。それは追々お教えしますので、ご安心を。もっと変わってしまったものが、他にもあります」
「というのは?」
「戦争が、軍事の事情が、とある兵器によって大きく歪みました。貴方にも、決して無関係ではない話です」
そうか。無関係ではない、か。
私にそこを期待したくなるのは、理解できる。これを責めたくはない。だが、気が進まない。また、戦争なのか。
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