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もしも、頭がよかったら。もしも、未来が見えたなら。もしも、もっとおしゃれだったら。もしも、イヌを飼えたなら。もしも、今の自分がいなければ。   もしも、この祈りが届くなら。 ===========================================  「ほんじゃ、本日の卜占学入門の講義始めるぞ~、寝るんじゃないよ~」 超絶ゆる教師ゆる先こと、ゆずる教授によるおよそやる気の感じられない講義(?)で今週がまた始まった。  「ナナナ、イフ今日のゆる先の天パ具合すごくね?」 隣で負けず劣らず緩い発言をしているこいつは、俺の唯一の友達、先駆駿(さきがけはやお)。こいつは縁起がいいからとかいう訳のわからないロジックで、いつも「ナナナ」と話しかけてくる。777からきているそうだ。そんでもって、俺は願祈大学卜占学部一年の一宮五郎(いちのみやごろう)。駿とは同級生で、こいつからは俺の姓名それぞれの頭文字をとって「イフ」と呼ばれてる。やたらオカルティックなこいつのセンスにはたまげたもんだが、わりに気に入っている。  「ナナナ、今日も行くよな?ノス研!」  「あたりめーだろ、いつか絶対あの似非野郎の化けの皮はがしてやるからな」 ノス研ってのは「ノストラダムス研究会」というサークルの略称。そう、かの有名なノストラダムスの大予言のミシェル・ノストラダムスの名前を冠しているわけだ。といっても、別に『ノストラダムスの大予言』についての研究をしているわけではない。このサークル名の由来はサークル長、星夢乃(ほしゆめの)という似非女だ。こいつはかのノストラダムスの生まれ変わりだとか吹聴していて、いつもジプシーのような衣装を身にまとっている。それだけならただの激イタ女な訳だが、こいつの厄介なところは抜群の占いセンスを持っていることと、ありとあらゆる造形に深いこと、そして美麗な見た目もあいまり、とてつもないカリスマ性を持っているというとこだ。そういうわけで、この星様目当てにわんさか人が集まっている。目的はそれぞれだが、8割は星様の信奉者、1割は占いをビジネス的に生業に使用として勉強に来るやつら、残りの1割は星に嫉妬し、ただ出る杭を打ちたいしょうもな共。そして俺はおそらくただ一人の例外、こいつの本性を知っている人物だ。 俺は入学前からこいつを知っていた。
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