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あたしは神経質なタイプだから、妊娠した時点で子育てに不安があった。
「赤ちゃんの頃から幼少時までの対応で性質って決まるんでしょ?
上手くやれる自信がない。それから遺伝も怖い。
あたしみたいに気にしすぎる子になってほしくない。
けれど旦那は大らかっていうか楽観的過ぎで、それも似て欲しくない。
っていうのを話すと、みんな大丈夫、大丈夫って、言うばかりで......」
21歳での出産。
その決意に潰されかけて、おもわず占い師に相談している。
ショッピングセンターの一角での限定イベント、パワーストーンや
アクセサリー売り場の横で、小さなテーブルを設置していた若い女性に。
「それよりまず無事に出産できるかどうか、そこから占いましょう」
黒いシンプルなスーツを着こんだ切れ長の目の美しい女性だった。
スッキリとした黒髪ショートカットでナチュラルメイク。
パープルに銀色の星を散りばめたマニキュア。
怪しげな風貌ではないので、つい引き付けられて椅子に座って向かい合った。
白いテーブルの上には大き目の水晶玉とタロットカードが置かれていて
カードを一枚、引かされた。
「あ、そうですね、安定期に入ったから油断してました。
そうだ、転倒してしまうとか、出産時に何か起こったりとかもしますよね。
やだ、どうしよう......。何か気を付けることはありますか?」
いつもの気にしすぎが押し寄せてくる。
「無事に出産できますよ。しかも安産です」
女性が少しだけ口角を上げて言った。
「うそだあっ、カード一枚で、そんなこと保証できるんですか?」
「占いとは、そういうものです」
「そ、そうですか、あのぅ、それで子供は、無事に育ちます?」
カードを再び引かされた。
「これは......」
女性がカードを見つめながら眉間にシワを寄せた。
秋風が冷たくなってきた時期に、別の意味で寒気がした。
膝の上に置いた両手にギュッと力をこめた。
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