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忘れられた空
中学2年の夏休み、私は親の都合で田舎へと転校することになった。
私は大きなキャリーバッグを引きずりながら、新しい町に足を踏み入れた。
見渡す限り広がる緑の田畑と、ゆるやかに流れる川。
遠くには青く霞む山々がそびえている。
都会のざわめきとは違う静けさが、私を包み込んだ。
「こんなところで、何をすればいいんだろう……」
胸の奥にぽっかりと穴が空いたような感覚に、私は思わずため息をつく。
だが、そのとき私の視界の隅に、どこか寂しげにたたずむ同い年くらいの少年が映った。
彼は私に気づくと、少し驚いたように目を見開き、そして無言で手を振った。
「…あの場所、見せてあげるよ。」
その声に導かれるように、私は少年について歩き始めた。
彼が連れて行ってくれるのは、「忘れられた空」という場所。
まだ誰も知らない二つの空が広がる世界の入り口だった。
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