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・オニギリ
「安倍まりあ! 今日、学校終わったらオニギリ食べに行こうよ!」
「はっ? 何、言ってんの?」
お昼休みに、隣のクラスから突然現れた川崎愛美の申し出に、私は露骨に眉根を寄せた。
「いや、実はさ……」
フフフと愛美は含み笑いをすると、スマートフォンに映し出されたショート動画を私に見せてくる。
──『ひとつ、700円近くする高級オニギリ!
一番安いのは350円で、トッピングは卵黄や黒毛和牛など様々!
その組み合わせは、アンミカも驚愕の2000通りぃ!
厳選した新潟県産コシヒカリを、惜しげもなく使用!
ふかふかご飯のお布団を被せて、握るのは何と2回だけ!』
愛美が見せてくれたスマートフォンの液晶画面には、栗色髪の愛くるしい女性が「天国と地獄」のメロディに乗せて、件のオニギリの店舗を小気味よいリズムで紹介していた。
「あっ、その人知ってるよ。
『まいこパンダ』さんでしょ。
今、TikTokとかインスタでめちゃくちゃバズってる、グルメインフルエンサー」
ココで、お昼のサンドイッチを食べ終えたサトミが、ひょっこりと顔を出し、私と愛美の間に割って入ってくる。
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