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──『羽田、緑川クンは大丈夫だから!
大体、前の抗争の時も緑川クンはアタシを助けてくれたでしょ!』
取り敢えず、羽田を安心させるLINEを送ると、私はスマートフォンをバッグに入れ、ほぼ一方通行の会話を繰り広げている、愛美と緑川クンの背中を追いかけた。
──つーか、羽田のヤツ。
セルシオ置いて、歩いてついて来てたんだな。
愛美の言う通り、店は歩いてでも行ける距離の為、車での尾行を止めたのは正解かもしれないけど、あんな血走った目で尾行されたらお巡りさんに呼び止められるんじゃないかと、私は気が気でならなかった。
住宅街を歩いていき、パチンコやファミリーレストランが建ち並ぶ幹線道路へと出ると、件のオニギリ屋さんが見えてきた。
相当な人気店なのか、平日の昼下がりなのに店の前はズラリと行列が出来ており、列の最後尾のカップルはラミネート加工をされたメニューを見ながら、仲睦まじい談笑を繰り広げていた。
「並ぼっか」
振り返って愛美は言うと、青い屋根の下から続いている行列の最後尾に並び、カップルからメニューを受け取る。
「緑川クン、どのオニギリにする?
卵黄の醤油漬けとか絶対に美味しいだろうし、それとネギトロを組み合わせたらめちゃヤバそう……」
例のごとく、顔を赤らめて愛美が訊くと、緑川クンは「豚キムチとか旨そうだな」と、高揚を包みこんだ低い声で答えた。
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