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「由理ちゃん、ちょっと」
お姉さんは顔を上げると、カウンター内の厨房でオニギリを作っている女の子を手招きして呼び出した。
「ココの注文、『牛すじとチーズ』でしょ。
何で、『カレーとツナマヨ』を作ってんの?」
「すいません、すぐに作り直します!」
女の子は私の前にあった「カレーとツナマヨ」のオニギリを引き取ると、急ぎ足で厨房へと取って返した。
「ゴメンなさいね、何か手違いがあったみたいで」
サイドテールのお姉さんは眉尻を下げると、私に向かって深々と頭を下げる。
「い、いえ! 忙しそうでしたし、間違えるのも仕方ないかなって!」
「忙しい、はあんまり理由にしたくないんだけどね。ホントにごめんなさい」
お姉さんは身体を起こすと、両手を腰にあて、ふぅと息をついた。
肘までまくられたオレンジのロンT、デニム。
スラリと細身の身体に巻かれた、青いエプロン。
お姉さんのその風貌と振る舞いは、「美人でカッコいいお姉さん」という印象を私に与えるに十分なモノであった。
「あっ、あのもしかして店長の実佳さんですか?
動画で見た時から、すごく憧れてて……!」
ココで愛美が、緊張でしどろもどろの口調になりながら切り出す。
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