・ゴメンなさいね

6/6
前へ
/15ページ
次へ
「由理ちゃん、ちょっと」 お姉さんは顔を上げると、カウンター内の厨房でオニギリを作っている女の子を手招きして呼び出した。 「ココの注文、『牛すじとチーズ』でしょ。 何で、『カレーとツナマヨ』を作ってんの?」 「すいません、すぐに作り直します!」 女の子は私の前にあった「カレーとツナマヨ」のオニギリを引き取ると、急ぎ足で厨房へと取って返した。 「ゴメンなさいね、何か手違いがあったみたいで」 サイドテールのお姉さんは眉尻を下げると、私に向かって深々と頭を下げる。 「い、いえ! 忙しそうでしたし、間違えるのも仕方ないかなって!」 「忙しい、はあんまり理由にしたくないんだけどね。ホントにごめんなさい」 お姉さんは身体を起こすと、両手を腰にあて、ふぅと息をついた。 肘までまくられたオレンジのロンT、デニム。 スラリと細身の身体に巻かれた、青いエプロン。 お姉さんのその風貌と振る舞いは、「美人でカッコいいお姉さん」という印象を私に与えるに十分なモノであった。 「あっ、あのもしかして店長の実佳さんですか? 動画で見た時から、すごく憧れてて……!」 ココで愛美が、緊張でしどろもどろの口調になりながら切り出す。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加