エッチな下着は防御力が高い

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 ありがちな話ではあるが、俺はゲームの世界に転生した。幸いなのか不幸なのかは解らないが、転生したのはよく知るゲームの中で、役割も特にないモブである。  おかげで、死亡フラグに縁がない人生というのは助かるが、残念ながら輝かしいステータスやらチートもなかった。  だが、俺にはゲーム知識というアドバンテージがある。 「隊長、今回の遠征も成功でしたね!」 「さすがエドヴァン隊長だぜ!」  エドヴァンというのはオレの名前だ。この世界はファンタジーなので、西洋風の名前が多い。一部地域に日本っぽい名前のキャラもいるような、典型的なヤツだ。  オレを取り囲み、やいのやいのと騒いでいるのは、傭兵団の仲間たちだ。ゲーム世界だからなのか、みんな地味に顔が整っている。特に金髪にバイオレットの瞳をした、後輩のジルなんかは、乙女ゲームでも通用しそうなイケメンキャラである。もしかしたらオレの知らないイベントNPCかもしれん。 「まあまあ、今回も全員無事で良かった。酒でも飲んで、鋭気を養ってくれ!」  そう言ってジルに財布を渡すと、傭兵団のみんなが「やった!」「隊長愛してる!」と騒ぎ出す。現金な奴らだ。  オレが傭兵団を作ったのは、まあ、ほぼ成り行きだ。テンプレ通り冒険者としてやっていこうと思ったのだが、思いのほか活躍し、気がついたら慕ってくれる仲間が増えていった。最初は冒険者クランなんてのも考えたが、結局は護衛任務に野党討伐、戦争に参加してる方が儲かるもんで、傭兵団の維持のために、なんとなくそうなった。  ちなみに女の子はいない。やっぱモブにハーレムなんか、なかったんだ。 「隊長は行かないんですか?」 「オレは所用を済ませて、着替えてから合流する。先に始めてくれ。アイツら、酒飲ませておかないと、うるさいからな」 「確かに」  ジルに後のことは任せ、オレは別行動する。重たい鎧は早く脱ぎたいし、シャワーも浴びたい。その前に、道具屋に寄って補充もしたい。  オレの強さの理由は、アイテムにある。だから、その準備を怠ることは出来ないのだ。 (今回の護衛任務で、ウィンドウルフが出現した。ってことは、条件が整ったはずだ)  逸る気持ちを抑えながら、道具屋へと向かう。このゲームでは、フィールドに登場するモンスターが、シーズンごとに変化する。ウィンドウルフが出現したということは、すなわち、ウィンドウルフ関連のアクセサリー装備が、店に並ぶ条件が整ったということだ。  道具屋の扉を開くと、真っ直ぐにアクセサリー売場に向かう。指輪や腕輪、ネックレスのなどのキラキラした装飾品が、ずらりと並んでいた。 「あった!」  思わず声に出してしまい、視線を感じて口を閉ざす。 (やった! 素早さアップの風狼のネックレス、防風の腕輪、何よりもチートなのは風狼の指輪(特)! これで二回攻撃が可能になる!)  この世界には、アクセサリー装備は耳飾り、指輪、腕輪、ネックレスと四種類存在している。通常、どの装備も一つずつしか着けられない。二つ着けたら効果がなくなるのかと、試したのだが――。  効果は、あった。  十本の指全てに着けたら、効果があった。なんなら一つの指に二つくらい着けられる。まあ、親指はさすがに邪魔なので着けていないが。  したがってオレの指には、利き腕の中指、薬指、小指に一つずつ。左手の親指以外の全ての指、中指と薬指に二つずつ。合計九個の指輪が嵌められている。はっきりいって趣味の悪い成金野郎みたいになっているが、ステータスアップには変えられない。もっとも、鎧を着れば手甲に隠れるので、ほとんど解らない。  そんなこんなで、オレの腕やら首には、馬鹿みたいに装飾品が着いている。どれもステータスアップ系のアクセサリーなので、どうしても外せない。  しかしながらこの方法は、オレ意外には出来ないようだった。試しにジルに指輪を二つ嵌めさせようとしたのだが、 「いや、何言ってるか解んないです」  という感じで拒絶された。なにかシステム的な制限があるのかもしれない。その後、なんとか四苦八苦して、 「この指輪は装備目的じゃない。オレがお前を特別に想ってるからその証だ。証しと装備は違うだろ?」  と丸め込んで、なんとか指に嵌めさせた。ジルの挙動がしばらくおかしかったが、二つも指輪を着けることに違和感があるのだろう。  なお、ステータスはちゃんと上がっていた。  とにかく、そんな感じだったので、仲間の強化は渋々諦めた感じだ。本当はネックレスも腕輪も渡したかったんだが……。  アクセサリーを買い占める勢いで購入し、急ぎ宿へと向かう。先に始めて良いとは言ったが、隊長のオレが行かないのは示しがつかないし、オレだって少しは飲み食いしたい。この世界じゃ、飲んで食ってくらいしか娯楽がないからな。  なお、女性と遊ぶというのも選択の一つだろうが、童貞ムーブを拗らせているオレは、そういう店に行ったことがない。病気怖いし。ちゃんと恋愛したいし。  常宿にしている宿へと戻り、重い鎧を外していく。装備チートのオレは、もちろんここでもチートをしている。オレはマジックキャスターなので、本来は鎧も剣も装備できない。だが、オレなら可能だ。  今では魔法剣士とかいう、このゲームにはなかった職業を名乗っている。このゲーム、ロール制だったから、バランスの良い職業は存在しないんだよな。 「ふぅ……、やっぱ重いし暑いよな」  鎧を外し、人心地着く。装備のせいでマジックキャスターのくせに変に筋肉があるが、重いものは重い。  アクセサリーを外し、鎧下に着ている服を脱いでいた、その時だった。 「隊長ーっ、帰ってますか?」  ガチャッ! と盛大な音を立て、扉が開く。ノックなしに現れたジルに、一瞬言葉を失って、「いきなり開けるな」と言い掛けて、ジルが真顔で固まっているのに気がついた。 「――」 「? ジル?」  ジルの表情が、みるみる真っ赤に染まっていく。オレはハッとして、自身の格好に気がついた。  赤いシースルー素材の、スケスケランジェリー。所々に黒いレースがあしらわれて、セクシーな雰囲気がある。  ゲーム内最強装備の一つ、『えっちな下着』である。 「た、隊長……っ」 「ちっ 違うからなっ!?」  誤解しないで頂きたい。これはゲームでは女性専用装備であるランジェリーが、オレも装備できちゃうから着ているだけである。決して、趣味ではないのだ。なお、上位互換装備にさらになぞに穴の空いている『セクシーランジェリー』という装備がある。まだ手に入っていない。 「あっ、そのっ……、エドヴァン隊長……」  なんだその顔は。普段、エドヴァンなんて呼ばないだろう。  顔を赤らめ、恥ずかしそうにするジルに、少しだけ嫌な汗が出る。恥ずかしいのはオレだが? 「違うぞ。本当に違うからな? 『えっちな下着』は防御力が高いんだ!」 「いや、どっちかっていうと攻撃力が高いですよ」 「いやいや、攻撃力補正はないんだよ! あくまで防御力で――あっ♥」  ジルの指先が、レースの向こうに透けるチクビをツンと突いた。  ビクンッ、と肩を揺らすオレに、ジルが密着するほど近くに詰め寄ってくる。 「ジ、ジルっ……?」 「エドヴァンさんがこんなに可愛いなんて、知りませんでした……」 「ちょ、ジルっ? 近いぞっ……?」  ジルの目はなんだか血走っているし、呼吸も荒い。壁際まで追い詰められてしまう。 「エドヴァンさん……」  ジルの唇が迫る。逃れようにも、腕をガッチリと捕まれ、逃げられない。マジックキャスターのステータスで、騎士のステータスに勝てるわけがない。おまけにオレ、今アクセサリー着けてない。  唇が重なる。ジルの舌がぬるりと口内に侵入してきた。熱い舌の感触に、ゾワリと背筋が粟立つ。 「んむっ、んっ!」  ジルの胸を叩くが、びくともしない。滅茶苦茶に舌で口のナカをかき混ぜられ、カクンと膝から力が抜けた。 「あ――、んっ、ふっ……。ジルっ……ん」 「エドヴァンさん……っ」  気づけば、ベッドの上に押し倒され、上にジルが覆い被さっていた。ジルの手が腰を撫で、シースルーの下着の下に手を滑らせる。 「あっ……、待っ……」  頭がボンヤリする。このままではマズイ気がするのに、身体がいうことを聞かない。 「……すごい、エロいっすね……」  興奮した顔で、ジルが胸を撫でる。 「ひぁっ♥」  どうしてこうなった。そう想いながら、結局オレは、抗うことが出来なかった。 おわり
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