16人が本棚に入れています
本棚に追加
「なんだか親近感湧くな。……うん、こうやって雑談しているのも大事なことかもしれません。そうだ、しばらく一緒に行動しませんか?僕も一人で心細かったし、危ないことを考える人もいるかもしれないけど複数人で動いた方が安全だと思うし……ダメですかね?」
「え、いえ、ぜ、全然いいです!むしろ、こっちこそいいんですか?私、記憶もないし、多分運動神経も良い方じゃないと思うので足手まといになる気がするんですけど……」
「そんなことないです!あ」
でも二つだけ、と彼は二本指を立てた。
「初対面の女性にこういうお願いは良くないとは思うんですが……そちらもよければ、僕のことは下の名前でいいですか?僕も、自分の名前を気に入ってるんで」
それと、と彼は続ける。
「丁寧語、ナシでいいですか?年上の女性に丁寧語で話しかけられるの、ちょっと窮屈で苦手なんです」
「ええ?でも、月さんだって丁寧語なのに」
「僕は年下だからいーんです。あと、この喋り方は癖なんで直せません!」
「ひ、開き直り……」
なんだろう。さっきからこの不思議な人に、完全に引きずられているような気がする。
同時に、彼と話していると得体のしれない環境への不安や恐怖が少しずつ薄れていくような気がするのだ。月がどこまでものほほんとしているからだろうか。あるいは、彼の人間的魅力を無意識で感じ取っているからなのか。
「では改めて。暫くよろしくお願いします、美紅さん!」
ハイ!と月は右手を差し出してくる。指が長くて綺麗な、それでいて女の人とは違う掌だった。美紅はおずおずと自分も手を差し出す。
「はい。……よろしく、ね」
握手をした途端、不思議な安堵感に包まれる。
デスゲーム系の漫画は結構読んだ覚えあるので、きっとこの選択は間違っていない。最初に仲間を作った人間こそ、生き残る確率が高いのだ。
それにまだ、このゲームが本当に『デスゲーム』になると決まったわけでもない。
――大丈夫。……絶対殺さなきゃいけないなんて、そんなルールでもないんだから。
残念ながら。
その認識が甘かったことに気付くまで、さほど時間はかからなかったわけだが。
最初のコメントを投稿しよう!