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天国と地獄つなぐエレベーター。到着先は天国と地獄、それからその中間に位置する人間界の三つ。いくら翼をもつ悪魔や天使といえど世界を行き来するには体力的に楽ではない。近年はエレベーターの利用が一般的だった。
そのうちの一つ、天国発地獄行の快速エレベーターに向かう天使混みの中に、平天使のミゲルの姿もあった。
「はぁ。」
短く吐いた溜め息に思ったよりも声がのってしまい慌てて口を紡いで周囲を見る。少々内気なミゲルには、自意識過剰とわかりながらも頬の熱くなる行為であった。
目線を下げながら、溜め息の原因に思考を傾ける。
いつまで繰り返せばいいんだ、この日々を。
耐えがたいほどの苦悩はない。だが充実した日々でも満足のいく日々でもない。逃げ出すことは許されない。雲に喉を少しずつ締め付けられるような、そんな感覚。せめてもっと違う任務もできるなら…。
しかし、現実は無情にも彼をエレベーターに押しやって任務へと連れて行くのだった。
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