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天使は未来を希(こいねが)う
エルデランドの大地は、地球の鼓動そのもののように、永永無窮の時の中で生まれ続けている。地下に眠る海嶺が地殻変動で姿を現し、壮大な大地を形作っていた。その大地に走る無数の亀裂が国々を隔てている。
新たに生まれる大地には豊富な貴金属の鉱脈が眠っており、その価値ゆえに争いが絶えない。国々は鉱脈を巡って対立し、空を焦がす戦いを繰り広げていた。
兵士に与えられた休息を削ぐように警告音が鳴り響く。
「敵軍が接近中! 全兵士は攻撃ポジションに就き指示を待て!」
兵士たちはその指令に反応し、迅速に戦闘の準備を整える。空中戦が始まる気配を感じ、空軍の若き兵士であるシオンもまた、緊張感をみなぎらせていた。
隣国スカルギアの空母が雲上に鎮座する。威風堂々としたその姿は、まるで天を支配する全能の神のようである。ハッチが開いて戦闘艇を次々と吐き出し、戦の嵐が吹き始めた。
兵士たちは風が吹き抜ける滑走路に整列し、鋭い眼差しで戦闘艇を見つめていた。しかし、出撃の号令はいまだない。
神経を昂らせていると、基地全体にさらなる指令が届いた。
「第二空軍基地より出撃準備が完了! 第一空軍基地の戦闘艇は出撃を待て!」
第二空軍基地は、巨大な壁で遮断された基地である。そこは「天使軍」と呼ばれる、翼を有する兵士たちが集められている。戦いのために鍛え抜かれた精鋭で、恐れを知らない者たちなのだとシオンは聞いていた。
第二空軍基地から、天使軍の部隊が白い翼を広げて飛び立ってゆく。白銀の戦闘服に顔と身を包み、その腕には口径の大きな銃が握られている。彼らの飛翔能力はすさまじく、戦闘艇の速度を軽々と超えてゆくのだ。
遠隔モニターには、敵の戦闘艇の狙撃を避けて飛び交う天使たちの姿が映し出される。天使のひとりが銃口の太いエアハントガンを構えて放つと、戦闘艇の操縦席から黒色の煙が上がった。コントロールを失った戦闘艇は、不安定な軌道を描きながら谷底へと落ちていった。
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