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自分よりも年下の人間に甘えて縋って依存しているなんて、過去の自分が知ったら呆れて嗤ってしまうだろう。
だけれど、自分が思っていた以上に、夫婦の生活とは息苦しいものだった。朝目覚めてから眠るまで、得意とはしない対象に寄り添って、時間を消化する。
それ以外の方法は、きっと赦されなかった。
そんな中で見つけた、---俺の唯一の心の拠り所。干渉されずに、ただ温もりを分け与えあえる存在と居られる時間だけが唯一息継ぎができた。
これがなかったら、俺はいつか窒息してしまう。
「…碧さん、大丈夫ですか?」
「…だい、じょうぶ、…じゃない」
妻に触れられて拒否反応を起こしてしまう自分が心底愚かで情けない。もっと上手くやり過ごせるはずなのに、思えば思う程自分の惨めさだけが露わになっていく。
「…直青、酸素ちょうだい」
「酸素?」
「苦しい。---助けて」
許可も得ずに、直青の唇に自分のものを重ねる。長い直青の睫毛が伏せられて影をつくる。その影の先端まで取り込んでしまえたら、どれだけ幸福なことか。
苦手な存在と過ごす時間と、他者を裏切ってまで自分の欲求を満たそうとする傲慢さに窒息してしまう。
わかっている。---自分はずっと、赦されないことをしているのだと。
それでも、この衝動を止める方法が、わからない。
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