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不倫という行為が、世間の正しい範疇に収められる常識の外側にあることも理解している。 「いいですよ、碧さん」 直青は俺にされるがままに、受け入れて。最初こそぎこちなかった服を剥ぐ指先は、幾度もの行為を経て自然な仕草を這わせる。 「---僕が今、貴方を楽にしてあげます」 「いつもごめん、直青」 「謝らないで。僕だってこんな監獄の中じゃ、---息が詰まる」 性行為のカケラも知らなかった純粋培養の彼を穢したのは紛れもない自分。俺から吸収した知識を行動に移すのさえ、最初は手一杯に見えた。それも可愛らしかったけれど、今は。 「碧さんとの時間だけが、唯一僕の自由だから」 「…うん、」 「こんな欲求を放たないまま閉じ込めておくのは、些か健康に悪いと思います」 うまい理由を取り繕って、俺だけに罪を背負わせないようにするのは、直青の優しさだと思う。その優しさに漬け込んだことに罪悪感がないと言えば嘘だけれど、---俺と同じ場所まで堕ちてきてくれるのなら。 そのことにさえも、安心感を抱ける気がした。
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