過去か未来か

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過去か未来か

涼太が砂場セットを持ち、春美を待っている。 涼太が5軒隣の家の方を見ると、春美が笑顔で駆けてくるところだった。 「リョウちゃん、すなば、いこうね」 涼太は笑顔でうなずく。 「あ!」 涼太が手にしている砂場セットを見て、春美が声を上げた。 「わたしの、わすれてた」 「ぼくの、かしてあげるよ」 「やだ。たんじょうびにもらったの、もってくる」 涼太は自分の砂場セットを手から離すと、両手で春美の腕をつかんだ。 「なに?」 「だめだよ」 「どうして?わたしの、もっていくの」 強引に自分の家に行こうとする春美を、涼太は必死に抑える。 「やめてよ」 春美が怒ったように言って、涼太の手を払おうとした。 その時、青い蝶々がひらひらと飛んできて、涼太の家の玄関の横で咲くラベンダーにとまるのが見えた。 「みてみて、ハルちゃん。あおいちょうちょ。すごくおおきいよ。きれいだよ。ハルちゃん、ちょうちょ、すき?」 涼太の言葉に、春美は「すき!」と答えて、ラベンダーに近づいた。 「かわいい」 二人で並んで蝶々を見つめている。 意識を失った運転手を乗せた車が突然住宅街に入ってきて、涼太の家から二件隣の家の門柱に突っ込んだのは、その時だった。 もし春美が家にスコップとバケツを取りに戻っていたら、事故に巻き込まれて命を落としていただろう。 きゃあと悲鳴をあげて、春美が涼太に抱きつき、涼太は春美の背中を一生懸命さすった。
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