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いつも同じ顔をして、いつも同じ仕草をする。
周りは皆いつも間違える。でも私は私を間違えない。
同じような顔をして、同じように育てられてきたけれど、私は自分が誰なのか、分からなくなることはない。
小さい頃の写真を見せてもらった。私はリリ。あっちはララだ。
「ねえ、リリ、わたしってララよね?」
ララが急にそんなことを言ってきた。
「当たり前じゃん、私がリリよ」
「時々ね、わたしってもしかしてリリじゃないかって思うことがあるの」
ララはどうやら自分と私の区別がついてないらしい。
「ええ、ほんと? 私がリリよ。あなたはララ」
「そうよね、そうよね。ごめんね、変なこと言ったわ」
あなたはララよ。
でも明くる日。
「あ、リリ」
「え?」
「リリ、この服どうかな?」
「え、なんでリリ? わたしはララでしょ?」
「何言ってるのよ、あなたはリリでしょ?」
「え、え」
ララったら慌ててる。
さすがにかわいそうなので、私はすぐに種明かしした。
「ごめん、今日はエイプリルフールだよ」
「あ……」
ララがカレンダーを見る。今日は4月1日。
「もう、びっくりさせないでよ」
「ごめんごめん」
安心した?
あなたがもし自分のことが分からなくなっても大丈夫。
私はちゃんと、分かるから。
私はリリ。あなたはララ。
生まれたときに間違えさえしてなければ、ね。
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