4人が本棚に入れています
本棚に追加
風を掴む翼
「ツバサ~有翼人政府は交渉に応じてくれるって~って何があったの!?」
驚くのも無理はない。倉庫に帰ると首を切り落とされた三人の死体。剣を抱いて死んだように眠っているツバサ。
「ツバサ! 起きて!」
「……ミソラか。どうなった?」
「交渉に応じてくれるって」
「よし、出発するぞ」
「でも、疲れてるんじゃ……」
「今寝て回復した。それに、事態は一刻を争う」
そう言うと剣を支えに立ち上がる。
「行くぞ、案内しろ」
有翼人政府官邸は、山の頂上にあった。理由は簡単。無翼人には来ることができないからだ。有翼人は飛んで簡単に辿り着けるが、無翼人は山を登らなければならない。攻められにくいということだ。
「はじめまして、有翼人政府長」
「ワシオでいい。よろしくの」
ツバサと対面した有翼人政府長は、髭を蓄えた老人だった。髭はフサフサなのに、頭の方はかなりの寂しい。
「単刀直入に言う。無翼人を潰すのに協力する。そっちに亡命させてくれ」
「……それはできん」
「なんでだ?」
「儂らは、無翼人の亡命者を受け入れとらん」
「……差別対象……か?」
「それに、御主は今回の戦争の火種じゃ」
「なに?」
戦争になったきっかけは鉄の翼だ。そして、それを作ったのはツバサ。確かに火種と言えなくもない。
「それにの。御主の技術は儂らには役に立たん」
確かに、生まれつき飛ぶことができる有翼人に鉄の翼は必要ない。つまり、無翼人に狙われているツバサを抱え込むメリットはない。
「……確かに。なら、交渉決裂ってことだな」
「ああ。今なら無事に帰してやる。早く帰んなさい」
「……貴重な時間を割いてくれたこと、感謝する」
そう言ってツバサは踵を返す。
「どうするのツバサ!」
官邸から出てすぐにミソラに捕まった。
「どうするもこうするも、もう最後の手段だ」
「何かまだ手があるんですか?」
「もう一つだけ、この戦争を左右できる力を持った集団がいる」
「……それは?」
「天使教」
最初のコメントを投稿しよう!