風を掴む翼

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風を掴む翼

 「ツバサ~有翼人政府は交渉に応じてくれるって~って何があったの!?」  驚くのも無理はない。倉庫に帰ると首を切り落とされた三人の死体。剣を抱いて死んだように眠っているツバサ。 「ツバサ! 起きて!」 「……ミソラか。どうなった?」 「交渉に応じてくれるって」 「よし、出発するぞ」 「でも、疲れてるんじゃ……」 「今寝て回復した。それに、事態は一刻を争う」  そう言うと剣を支えに立ち上がる。 「行くぞ、案内しろ」  有翼人政府官邸は、山の頂上にあった。理由は簡単。無翼人には来ることができないからだ。有翼人は飛んで簡単に辿り着けるが、無翼人は山を登らなければならない。攻められにくいということだ。  「はじめまして、有翼人政府長」 「ワシオでいい。よろしくの」  ツバサと対面した有翼人政府長は、髭を蓄えた老人だった。髭はフサフサなのに、頭の方はかなりの寂しい。 「単刀直入に言う。無翼人を潰すのに協力する。そっちに亡命させてくれ」 「……それはできん」 「なんでだ?」 「儂らは、無翼人の亡命者を受け入れとらん」 「……差別対象……か?」 「それに、御主は今回の戦争の火種じゃ」 「なに?」  戦争になったきっかけは鉄の翼だ。そして、それを作ったのはツバサ。確かに火種と言えなくもない。 「それにの。御主の技術は儂らには役に立たん」  確かに、生まれつき飛ぶことができる有翼人に鉄の翼は必要ない。つまり、無翼人に狙われているツバサを抱え込むメリットはない。 「……確かに。なら、交渉決裂ってことだな」 「ああ。今なら無事に帰してやる。早く帰んなさい」 「……貴重な時間を割いてくれたこと、感謝する」  そう言ってツバサは踵を返す。 「どうするのツバサ!」  官邸から出てすぐにミソラに捕まった。 「どうするもこうするも、もう最後の手段だ」 「何かまだ手があるんですか?」 「もう一つだけ、この戦争を左右できる力を持った集団がいる」 「……それは?」 「天使教」
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