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上空の開戦
ミソラに案内してもらい、天使教本堂へと入る。
「待ってて大、司教様を呼んでくる」
「頼む」
(さて、どうしたものか……天使教は数はいるが戦争には参加しないだろうし、多分中立を保つだろうな)
これからのことを考えていると、ミソラが一人の老婆を連れて戻ってきた。
「初めまして。私が天使教の大司教をしております。シラクというものです」
「初めまして、ツバサです」
挨拶もそこそこに、ツバサは本題に入る。
「……つまり、無翼人と有翼人の戦争を止めた上で無翼人政府長には報復がしたい、と?」
「簡単に言うとそんなところです」
大司教は少し考え込むが、やがて結論を出す。
「我々は戦争に介入することはできません。ですが、もしも居場所がないのなら、信徒として迎えることはできます」
「なるほど……。では、もし俺が失敗したら、かくまって下さいますか?」
「分かりました。それで、あなたはこれからどうするのですか?」
「第三勢力として、一人で行きます」
剣を肩に背負うと聖堂を出る。
「ツバサ! 今の話本当!?」
慌ててミソラが追いかけてくる。
「ああ、俺一人でかたをつける」
ミソラは知っている。ツバサは一度こうと決めたら退かない。それに、ツバサは馬鹿ではない。勝算はなさそうだが、何か考えがあるのだろう。
「……もう止めませんよ。無駄ですから」
「悪いな。迷惑かけた」
「ここで死ぬつもりは、ないんですよね?」
「……ああ」
「なら、生きて帰ってきてください」
「……分かった」
それから数週間後、有翼人と無翼人の戦争が始まった。戦場はほぼ上空になる。兵数はかなり無翼人が多い。
「かかれ!」
『おおっー!!』
怒号が響き、有翼人と無翼人がぶつかり合う。寸前、最前列にいた兵士の首が一列まるごと吹き飛ぶ。
「何者だ!」
「俺だよ」
目立たないように低く飛んでいたツバサが、ゆっくりと兵士たちの最前線に浮上していく。
「戦争の前に、俺を相手してもらおうか?」
ツバサは静かに加速剣を構えた。
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