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希望の一振り
「ここは……」
ツバサが目を覚ましたのはいつも自分が寝泊まりしている倉庫だった。
(……俺は、確か……)
タカメに負けて地上に落ちたことまでは覚えているが、そこから先の記憶がない。
「あ! ツバサ、目が覚めたのね!」
そう言って駆け寄ってくるミソラ。
「おまえが、ここまで運んでくれたのか?」
「うん」
どうやら、地上に落ちて気絶していたツバサを倉庫まで運んでくれたらしい。
「一人でかたをつけるつもりが、迷惑かけちまったな」
そう言って謝るツバサ。それを聞いて、ミソラはポロポロと涙を流し始める。
「まったく、余計な心配ばかりかけさせて……こんなことなら、最所から着いていけばよかった」
「いや、それは駄目だ」
二人とも分かっていた。有翼人で、政府に顔が利くミソラが行けば、ツバサの立場がより危ういものになる。結果的に戦闘になってしまったが、今回はあくまで会話に言っただけなのだ。ミソラを連れていけば、その時点で侵略の手助けをしたとみなされ、即先頭開始だ。
「……今の状況は?」
「開戦一歩手前って感じかな。いつ始まってもおかしくないし、小競り合いは始まりつつある」
「なら、急がねえとな……」
そう言ってツバサは布団から這い出る。腹部に鈍痛が響く。銃弾を受けたのだから当然だ。
「まだ動いちゃ駄目だよ!」
ミソラが肩を掴んで布団に寝かせようとするが、ツバサはそれを振り払って這い進む。
「銃弾は摘出してくれたのか?」
「う、うん。でも素人だから、また無茶したらすぐ傷口が開いちゃうよ!」
「俺が寝てた分俺たちは後手に回った。遅れを取り戻さねえと!」
そう言って工具を握る。
「どうするの?」
「あいつら、どういうわけか鉄の翼を使いこなしてやがった。それに銃もかなりの数を用意してやがる。だから、こっちもそれなりのもんを用意しねえと!」
「つまり、兵器を作るってこと?」
「まあ、そうなる。そう簡単にはできねえだろうが、時間がねえ以上、すぐに作業を始めねえと……!」
ツバサの腹部に巻かれた包帯に血が滲む。
「無茶だよ! そんな身体で!」
ツバサの手から工具を取り上げ、強引に布団に戻す。
「俺しかいねえ……! 俺しか止められねえだろ……!」
「なら、ツバサはここで指示して、私が動く!」
「……できるか?」
「もちろん!」
そして三日後。
「……できた!」
「名前はどうする?」
「じゃあ……そのままーー加速剣」
黒光りする柄に、鉄色の刃、柄には引き金が付いているが、銃剣というわけではなく、銃身はない。奇妙な形の剣が、そこにはあった。
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