彼女が選ぶ最後の色

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 その声は優しさに満ちていたが、少女はムランの手を見つめるだけで答えなかった。  彼は少女をそっと抱き上げ、家へと連れ帰った。迎え入れるように扉を開けたのは、妹のリア。彼女の瞳は好奇心と驚きで見開かれていたが、言葉は出なかった。  ムランはサーラをベッドに寝かせ、彼女が目を覚ますまでその傍らで見守っていた。  やがて、サーラはゆっくりとまぶたを開き、自分の周囲を見渡した。木造の家の天井と、優しい光が差し込む窓。彼女の視線がムランと交差すると、一瞬だけ怯えの色が見えたが、彼の穏やかな表情に安心したのか、サーラは小さく頷いた。 「ここは…どこ?」  か細い声で尋ねたサーラに、ムランは静かに答えた。 「僕の家だ。君は森で倒れていたんだよ。」  しばらくの間、サーラは何も言わなかった。ただ、自分の翼を見つめ、その黒と白の対比に心を痛めているようだった。      ☆  サーラはムランとリアとともに共同生活を始めた。  ムランとリアと共に暮らす日々が続く中で、サーラは次第に心を開いていく。
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