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夏休みがやってきた。 今年はバイトの夏休みになるだろうな。 去年の夏休みはなんだかんだで、 ほぼ毎日、圭に会ってたような気がする。 だいたい圭が家に来るか、圭のお父さんが朝から迎えに来ちゃうみたいな。 なぜバイトしたいかは、 バイクの免許資金。 おれも、バイクの免許が取れる年になった。 圭と一緒にツーリングへ行きたいと思ってる。 圭はバイクなんて興味ないだろうから、 後に乗せて。 バイクはオヤジのをもらう予定。 でも、すぐに圭は乗せられない。 初心者にもう一つの命の乗せて走れるはずがない。 ん? おれ、圭とどこかへ行きたいからバイトしたいのか? ん? ちょっと考えるぞ。 圭はかわいい。 とてつもなくかわいい。 それは間違いない。 中学からの4年ちょっと間でたくさん告白されたのを知ってる。 告白されるたびに、 「時、告白されちゃった。 どうしたらいい?」って言われる。 目がキラキラ輝いて、何かを期待してるみたいな目で。 「おれに聞かれても…保護者じゃないんだから。」 って答えるんだけど、 鼻の奥がつんとして、 胸がドキっとする。 でもだ。 圭はおれのこと、そういう対象では見てないだろうなって、 こんな面白い女の子と友達って関係が、 おれのつまんない感情でダメになるなんて、 想像しただけで、頭を抱えて床にグルグル転がりたくなる。 圭がいない毎日を想像すると、 子供みたいにジタバタして、 圭を思い出すたびに毎日泣いてしまうだろう。 再でもだ。 絶対に圭を恋愛対象として見てはいけない宣言は中学1年の時にした。 圭がすぐにおれの心にすみついた頃、 多分、中1の5月。 好きなんて感情があると圭の隣にいることができないんじゃないかって、 確実に思った。 圭はおれのことはホントに親友って思ってるだろうから、 恋愛感情とかなくて、 人と人って感情しかないだろうとか勝手に分析した。 圭との空気感、 すごく好きなんだ。 心が通じてる安心感っていうか、 とても大事にしたくなる。 お互いを理解し合って、 全部がよくて、 心の凹んだとこに凸って、 心が平らになる。 じゃ、 ついでに、 おれの未来を考えてみるぞ。 高校は来年も一緒のクラスってのは確定してる。 来年も一緒にいられるだろう。 それから先のこと。 圭は大学へ行くだろう。 おれは? 高校卒業したら働きたい。 何かのスペシャリストを目指してるわけじゃないのに大学なんて行けないよ。 そんな計画性のないことに親のお金をつかっていいわけない。 おれは就職。 と、いうことは、 圭はどこか知らない街で暮らすようになる。 圭のいない毎日がやってくる。 あー。 そうか、 このままじゃ、 確実にそうなるのか。 どんどん疎遠になって、 圭のいない、 違う時間を過ごして、 同窓会なんかで会って、 わたし、子供生まれたのなんて言う圭を、 おめでとう、男の子?女の子?なんて聞いてるおれが見える。 こんなにずっと一緒にいたのに、 未来は別々になっちゃうんだな。 恐怖だ。 おれは圭とずっと一緒にいたいんだと確認しただけになったな。 これからどうする? 宣言を撤回して、 無理なの承知で、 圭とずっと一緒にいたい宣言するか。 したい。 圭と一緒がいい。 じゃないと、つまんない未来しか見えない。 もっとちゃんと圭を見つめよう。 たとえあんな素敵な女の子を彼女になんてできなくても、 一生友達だっていい。おれの全てで、 圭の心に寄り添いたい。 圭に電話しよう。 ちょっとでも圭といられる時間を増やしたい。 スマホを持つと、 電話が鳴る。 圭のお父さんから。 震えてる声、 おれの心も震える。 圭… 嫌だ。 「時、 どうしよう。 圭が事故にあった。 どうしよう。 早く来てくれ。」
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