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4
違う世界にいる。
夢じゃない。
あ、わたし、そう、
事故…。
魂が離れてしまってるんだ。
体がないの。
でも、見える。
遠く遠くに時がみえる。
何でそんなに遠くにいるの?
ない手をのばす。
届かない。
悲しい。
ねぇ、時。
近くにいてよ。
近くに来てよ。
わたしだけにみせてくれる優しい目が、
笑ってない。
いつもわたしを見て笑ってくれるのに。
すごく悲しい目をしてる。
その悲しい目にわたしの心はとっても痛い。
わたしはここ。
早くむかえにきて。
時のことへ行きたい。
まだ、
手をのばす。
あきらめない。
やっぱり届かない。
どんどん遠ざかる。
嫌だ。
嫌だ。
お願い。
一人にしないで。
時、
時、
とき!
わたしはここ。
見つけて。
強く強く願う。
その瞬間、
ないはずの手が、時に触れる。
体?
心?
魂?
の、
行く先が、
ベクトルが慣性の法則を無視した勢いで変わる。
あっちからこっちへ、
思いが通じたの?
時に近づく。
どんどん近づく。
近づきすぎて、
時の体の中に、
心の中にまで入っちゃった。
世界が全部、時になるような感覚。
完全感覚。
時の心を感じる。
聞こえる。
見える。
「なんでだよ。
圭、
まだ伝えてないことあるのに。
ずっと一緒だって、
さっき、
思ったのに。
早く戻ってきて。
お願いだよ。
圭のいない世界なんて、
おれの世界じゃない。
二人でいようよ。
圭、
大好きだよ。」
あたたかい心がわたしの心に流れ込む。
帰らなきゃ、
時を悲しませたくない。
愛なんてよくわからないけど、
好きじゃ足りない。
わたし、
時を、
愛してるよ。
ずっと一緒にいようよ。
時と一緒にいたい。
時の心はオレンジ色に光ってわたしを包んで照らしてる。
これが時の気持ち。
うれしい。
あれっ?
変な音がして…
あ、
これ、
境界線を越える。
あっちとこっちの。
戻ったの?
夢みたいなあっちの世界から。
あー!
体があちこち痛い。
重たい瞼を開ける。
時の目が、アップで。
すごくうれしそうな目をして。
涙、すごくて。
「圭、よかった。もう、かたっぽはやだよ。」
ん?
どんな意味?
時が笑う。
戻れてよかった。
笑ってる時の顔。
安心する。
時がわたしの顔に触れた手に、
心の温度を感じた。
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