可愛くなりたい

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「そんなに完璧主義じゃ、可愛げがねぇっつうか痛々しいっつうか」 「はぁっ⁉︎」  可愛くないから努力して鎧を身につけてるっていうのに、本当にこいつは空気の読めない奴だ。 「何よっ、あんたなんて医者の息子の癖に碌に勉強も出来ないじゃない。情けないったらありゃしないっ」 「はぁっ⁉︎」 「何よ、文句あるならあんたも100点取ってみなさいよっ」 「……う、うっせぇブスッ」 「は⁉︎ 何よ馬鹿っ‼︎‼︎」  結局、この大城という男とはそれっきり。小学校卒業とともにどこかの私立中学に行ったらしいけど、そんな事はどうだっていい。私の人生から早々にいなくなってくれて良かった。  そして月日は流れ、私は風の噂で彼が美容整形外科医になった事を知った。 「財前せんぱ~いっ、今日デートなんですよぉ♪」 「だから何? 言っとくけど、代わらないわよっ」  そんなやり取りを見ていた社内の男どもは、今日もヒソヒソヒソ。どうせ仕事以外お前は何にも無いんだから代わってやれよと言わんばかりの目で私の事を見てくる。全くもう。こんなはずじゃなかった。  社会人になってメイクを覚えた私は、素敵な魔法で美女ライフを送るはすだった。それなのに、くだらない社員旅行に強制連行された挙句にスッピンを晒す羽目になってしまい、それからの男どもの態度といったらまぁ手のひら返し。  結局は顔。どんなにメイクでキメたって、魔法が解けたら何の意味もなさない。  いっその事、整形でフルカスタムしてしまおうか。美女になってこんな職場やめて秘書にでもなってスパダリに愛されて、ゆくゆくは社長夫人。そんな人生にしたい。  私に足りないのは誰もが羨む美しい顔。それさえ手に入れれば、道はきっと切り開かれる。  がしかし、フルカスタムともなるとお値段が尋常じゃない。独り身で彼氏もいなくて仕事ばかりの私。ある程度まとまったお金はあるけれど、それでも手が届かないような額を要するのがフルカスタムだ。  あぁ、どうにかならないかしら。
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