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「何だ、俺の顔に何かついてるか」
「え?」
「さっきからジロジロと。不愉快だな」
「ふ、不愉快っ⁉︎」
それはこっちの台詞だっつうの。こいつも美雪と同じ輩。見た目は成長しても中身はあの時のまんまだ。
「あのね、さっきの何? どこがってどういう意味なのよっ」
「あぁ、あれか。あれは可愛いっていう女子特有の決まり文句への返事だよ。そりゃそんだけ塗りたくってたら猿だって可愛くなれるからな」
「は、はぁっ⁉︎」
何こいつ‼︎‼︎ アラサーにもなってお世辞の一つも言えないのか。どれだけ見た目が良くても、所詮は下の下の男というわけだ。
「何よ、その歳でお世辞の一つも言えないなんて、相変わらずクズ男ねっ‼︎‼︎」
「は⁉︎」
そんなキリキリしたやり取りをしている中、来た来た、イケメン察知レーダーのついた女、美雪。
「もぅ、和香子ちゃんったらはしたないわよぉ。ねぇ、そういえば大城くんってお医者様になったんでしょ。凄ぉいっ、ちょっとお話聞きたいなぁ♪」
人妻の癖に猫撫で声で近づいてくるなんて、非常識にも程がある。でも、この話術で男どもはころっと魔法にかかるのだから、ちょっとこの技を観察させて貰って私も習得出来るようになろうかしら。
「おいっ財前っ」
「ん?何」
「何ださっきからチョロチョロと」
「え、まぁちょっと技の研究をね」
「技? あぁ、これの事か」
彼はそう言うと、何を思ったのか私の腕を取りプロレス技をし掛け始めた。
「い、痛い痛い痛いっ‼︎⁉︎ 何してんのよ馬鹿じゃないのっ‼︎⁉︎ それ、女子にかける技じゃないでしょっ⁉︎」
「技の研究してるって言うから」
「いやいやあんた、ずっと前から馬鹿だと思ってたけど、本物の馬鹿だったのね……」
「は?」
「えっ、う、うわっ、ひぃーー‼︎‼︎」
技をかけられる事数秒でノックアウト。あの頃は私の方が強かったのに。彼はシレッとした顔をすると、友人の方へ消えて行ってしまった。
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