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「まさかお前とバーで飲む日が来るなんてな」
「まぁね」
「ところで財前、お前結婚は?」
「してると思う? あんたはどうなの」
お互いに独身。そしてお付き合いしている人も無しときた。これは好都合。彼女持ちの男を引っ掛けるのは流石に気が引けるけど、そこを心配する必要もない。
計画の事を考えるとつい顔がゆるんでしまい、彼に変な誤解を与えてしまった。
「何だ、まさか俺が医者になった途端狙う気か」
「は?」
「ガキの頃なんて碌に話しかけてもこなかった癖に。急にサシ飲みに誘ってくるなんておかしいとは思ったんだ」
まぁ違う意味で狙ってるから間違いではないけど、この棘のある言い方何とかならないものか。
その後しばらくサシ飲みしていて気がついた事がある。この男、なかなか酒が強い。ベロベロになるまで酔わせるには、相当時間を要しそうだ。これは想定外。
「財前、あんまり飲み過ぎるなよ。お前を担いで帰るなんてごめんだからな」
いちいち嫌味しか言えないのかこの男は。文句の一つや二つ言いたいところだけど、ここで彼が気分を害して帰ってしまっては全てが水の泡になってしまう。
ここは腹立たしい気持ちをグッと我慢して、彼の気分を上げる作戦でどんどんお酒をすすめてしまおう。
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